清水久和「フルーツとリーゼント」が青山のclub EAST SHOWROOMで開催中だ。エキシビションでは、これまでの清水久和SABO STUDIOでの作品と、清水作品ではおなじみの鏡とリーゼントの新作が発表された。
清水のアイコンとなっているリーゼントの新作は、今回、床にごろんと寝そべった形のベンチのようなオブジェ。艶かしい曲面をもつトロけるような清水のデザインが一層際立つ造形だ。
今回、清水が昔撮影した写真を貼りこんだという鏡がかたち違いで5点、展示会場の壁面を彩っている。フルーツや、魚肉ソーセージ、皿に盛られたパフェなど、清水にはおなじみのモチーフがどこか懐かしさを感じさせるこれらの鏡は、作品のモチーフの可愛らしさ、愛らしさも特筆すべきものだが、鏡本体の木の質感や、造形も際立つて美しい。
金属の留め金でギュッと圧縮された、魚肉ソーセージの首の部分の肉感的なはりのある膨らみの曲面は、かつて清水がデザインしたオブジェ「フルーツ」シリーズやIXYデジタルにも共通するディテールだ。
一本の無垢のいちようの木を素材にしたフレームは、鼻を近づけるとどこか銀杏の香りがする。どこか銀杏のかたちを思わせる、歪んだ楕円の鏡の造形もユニークだ。
驚くことにこれをつくるにあたり、清水は一切図面をひいていない。設計にはいわゆる3Dのモデリングをするだけだという。しかもそれをあたかも粘土をこねるように、手でラフスケッチを描くようにやる。それが清水久和のデザイン手法がコンティニュアス・デザイン=連続性のあるデザインと名付けられているゆえんである。またコンティニュアス・デザインでは、機能と造形が密接な関係性をもったデザインをたった1人で行うことのできるメリットがある。
3Dのプログラム上でおこなわれるデザインには、微妙な誤差、個体差など、曖昧さは一切無縁だ。この鏡を構成するなめらかな曲面には概念的に一切の継ぎ目がない。そして量産も可能である。
そのデジタルなプロセスは、すべての制作工程をコンピュータデータを入力したNC旋盤で行う製造工程も同様だ。しかしそこには誰もが扱うことができるコンピュータソフトを使いながら、簡単には真似することのできない高度な技術という裏付けがあることも忘れてはならない。
では、作品には手作業でつくられたものに備わる、いわゆる味も感じるが、という問いに清水は、3Dモデリングで完璧につくられたものには、完璧につくられたものにしかできない味が生まれるのだという。
見た目は限りなくクラフトに近いが、その手法はインダストリアルデザインの最前線をいっている。それが清水久和のデザインなのだ。
清水久和「フルーツとリーゼント」
開催中〜11月4日(月・振休)
club EAST SHOWROOM
港区南青山5-12-27
http://sandodesign.com/