渋谷区立松濤美術館で開催中の「古道具その行き先 ―坂田和實の40年―」には、日常のなかで見慣れたものから、あまり見慣れないもの、あるいは、町の金物屋さんで普通に売っていそうなものから、博物館の収蔵品クラスと思われるものまで幅広く展示されています。
それらは具体的には、ヨーロッパやアジア、アフリカ、南米などでつくられた有名無名な古美術品や工芸品であり、ブラウンの計算機やカンペールの古靴、魚や餅を焼く網や洗濯物カゴなどの工業製品や日用品など。そのどれもが時を越えて人々に愛でられ、生活のなかで使いこまれ、普通にみれば道具としてはその役割をすでに終えたと思われるものたちである。
本展のレヴューがエキサイトイズムに掲載されました。ご高覧いただけましたら幸いです。
本展覧会は、骨董や古道具に対する興味のありなしに関わらず、美術館のなかで、さまざまな来歴をもった物たちを、並列的に「みる」体験として、とても興味深かく思った。そして、ただそれらをみるだけでなく、それらの品々に向き合う人の「もの」を見る目や、ものとの向き合い方に問いを投げかけるような展覧会だと思った。
本文ではいろいろと書いていますが、自分のなかでもその眼差しは確かなものであろうはずもなく、いまの思いや考えをなるべく客観的にテキストにしています。本展をみて、みなさんがどのように感じたか、とくにデザインやアート、ファッションを仕事とし、志しているみなさんがこれらの物たちをみてどのように感じたのかを知りたいと思いました。僕にとってそんな、ひとそれぞれのものを見る目のひとつの「ものさし」となるような展覧会です。
また2階奥の小部屋に展示されたものたちは、美術館での展示と考えるとかなり異質なものだと思います。日頃から骨董や古道具好きな方には見慣れたものたちかもしれませんが、それでも、なるほどと思うか、クスッと笑うか、素通りするか。そのいずれかはこれらを見る人によってはっきりと分かれると思います。僕はかなりの時間をかけて、この部屋に展示されたものたちを眺めていました。
エキサイトイズムではテキストとあわせて会場写真の撮影もさせていただきました。デジタルとは無縁なこれらの物たちを、ライカMP6というアナログなフィルムカメラで撮影しています。本展の図録に掲載された写真も、ライカM3という50年前に製造された古いフィルムのカメラで撮影されたと聞きました。素敵な写真が多数収録された展覧会図録も必見だと思います。
僕は会期中にもう一度観に行こうと思っています。
「古道具その行き先 ―坂田和實の40年―」
開催中〜2012年11月25日(日)
渋谷区立松濤美術館
(掲載写真は美術館の許可をえて撮影しています)