「"ART & PRODUCT" - アートとプロダクトの不穏な関係」と題したグループ展が清澄にある AI KOWADA GALLERYにて開催中だ。
出展作家は、磯谷博史氏、大田秀明氏、木住野彰悟氏、佐藤好彦氏、鈴木康広氏、土屋貴哉氏、冨井大裕氏、ホンマタカシ氏、三田村光土里氏、森田浩彰氏の10名のアーティスト。
展示作品はプロダクトをテーマにした絵画や写真、映像などの平面作品にくわえ、実際の工業製品をモチーフにした立体的なレディメイド作品など十数点。たとえば、以前、目黒のギャラリー青山|目黒で出会った森田浩彰氏の、ナチュラルミネラルウォーターのグローバル企業であるエビアンとボルビックの500mlペットボトルを使った関係性をテーマにした「From Evian to Volvic」(森田氏のペットボトルからペットボトルへ中の水を移す実体験に基づく作品)や、写真家のホンマタカシ氏による消費社会のひとつの象徴でもあるマクドナルドのトレードマークを、郊外や現代社会の象徴として扱った写真シリーズ『M』、冨井大裕氏は「ハンマー」と題し、ハンマーを並べた彫刻的でアブストラクトな作品を出展している。
どの作品もプロダクトとしての物自体の社会的なあり方に着目しながら、プロダクトがもつ用途という具体的なあり方を比喩的にあつかうことで、その意味をそこに残しながら、プロダクトから抽象概念だけを抽出しているようにみえる。
たとえば、佐藤好彦氏の「Type of Peace」は、PCのキーボードからキーだけを抜き出し、それをある意味をもった文字になるように配列することで、記号の刻印されたキーの本来の使われかたとはさほど遠くはなれることなく、アート作品たりえる作品を作っている。それはキーはキーボードの上にただ配列されているだけでは、たんに記号にすぎないが、それを指し示す機能が明確である場合、ある意味や文字として浮かび上がってくることを、物そのものを再構築しあらためて示した作品といえるだろう。
本展の意義はアートとプロダクトの不穏な関係というコンセプト自体にあると思うが、ここに展示された作品から、その意味を深く読み解いていく作業は容易なことではない。デュシャン、あるいはレディメイド、ウォーホールやリキテンスタインを例にだすまでもなく、これらの作品がわれわれが置かれた消費社会においてある批評性をもってたち現われていることは否定の余地もないだろう。
台座の上に置かれただけのボーリング球や、野球のボール、あるいはペットボトルが示すのは、もちろんこれらの工業製品を賛美するわけでも、それがある豊かな社会を物自体を選ぶことで謳歌しているわけでもない。もしここに選ぶことの価値を見いだせるとしたら、それは同時代的な優れた感性をもった芸術家たちによる時代を編集し、「手術台の上におけるミシンとこうもり傘の出会い」のように、異質なもの同士を組み合わせ、硬直した価値をゆさぶる卓越したセンスのたまものだろう。それは本展の隠されたテーマでもある広告もまたしかり、である。
「ART & PRODUCT」~2011年12月22日(Thu) AI KOWADA GALLERY