大阪はNakanoshima Bank EASTで行われたDESIGNEAST 00が終了してからはや一週間。個人的にはその後の名古屋に続いたトーク3連発のせいもあり、一週間という時間の経過が早くもあり長くもあるのだが、いずれにしても大阪で過ごした2日間は濃密に時間を重ねたという実感があるこおとが嬉しい。
19日に大阪に入り、翌日の大阪デザインミーティングのモデレーター役の下見もあり、南船場、堀江、御堂筋辺りを徒歩で見てまわった。そして昨年の11月生まれて始めて大阪を訪れ、その際にはあまり見ることのなかったさまざまな面に直面することが出来た。堀江という街の辺りは噂では聞いていたが、東京の代官山辺りを彷彿とさせるような若者によるファッションを中心とした賑わいがあり、新町、地下鉄の駅がある四ツ橋あたりの裏道は連休中ということもあってか静かで、のんびりと街歩きを楽しむことが出来た。またアメ村周辺は東京の竹下通りのようなキッズを中心としたさながらアミューズメントパークのような観光地と化しており、猥雑な賑わいの中に、東京の同じような繁華街と比べると異なる大阪風情を感じることも出来るユニークな雰囲気だ。
さて今回が第一回目、正確には00と名打たれたDESIGNEASTは既にさまざまな方面からのレポートにもあるように、これまで行われてきた大阪のデザインイベントとは異なる、若い世代による大阪発のデザインイベントとしては客観的な判断を踏まえ大成功をおさめたといってもいいだろう。イベント自体は短い準備期間にも関わらず、極めて効果的で効率的な広報活動により、入場者2000人近くを集めたという。
デザインイベントとしては、ゲストによるトークに特化したイベントということで、物よりも人、そして事に焦点をあてているようにみえる。
今そこにある現象としてのデザインそのものよりも、デザインが生み出される過程、そしてそれが社会に浸透していく過程での物にこめられた目には見えない背景や、作り手の思いのようなものを中心に据え、クリエーターそれぞれのの胸の内を開示するような「語り」という方法で、個々のデザインに対する考え方を、ハートに直に響くようなコンテンツを散りばめていく、そんな優しくも熱い、デザインイベントであったように思う。
今回は個人的にはイベントの参加者ということもあり、各々のトークをゆっくりと聴くということに集中することは出来なかったが、それでもイベントの裏側からこのイベント自体の盛り上がりを体験することが出来るという貴重な機会になった。
結論から言えば、このようなイベントはただ見るだけではなく、参加することが面白い。そんな実感をもった。
心地よくイベントに参加し、川辺の風に吹かれながら充足感を感じることが出来たのもそれもこれも充実したこのイベントを運営されてきた若い実行委員の皆さんのご尽力のお陰だと思う。心より感謝します。それは東京や海外から大阪にこのイベントの為に集まったゲストの寛いだ表情を見れば、このイベントがデザインイベントとしていかに出色であったかが分かるだろう。
急遽モデレーターとして参加させていただくことになった最終日のデザインミーティングのトリとなる「大阪デザインミーティング」では、大阪のデザインについて、戦後生まれの各世代の識者の方々から、単なる世代論に陥ることのないくったくのない意見やそれぞれの大阪史観が、各々マイクを手にクロストーク形式でビールやワインを片手に語られ大いに盛り上がった。
東京生まれの僕にはDESIGNEAST 00の会場にもなったNakanoshima Bank EAST棟をデザインした間宮吉彦さんが、自身の空間デザインにより、いかに間宮さん以降の若手デザイナーに影響を与えてきたのか、それを知ることが出来たのも貴重だった。その影響力の大きさは大阪の空間デザインにおいて「間宮さん以降・以前」ということも可能で、それはまた大阪の風景を作ってきたもう一人の巨人、建築家安藤忠雄氏と比較対象することも可能なのだろう。
またその安藤忠雄を越えていかなければならないと語ったgraf服部滋樹さんの言葉も、次世代の大阪の風景、あるいはデザインにより景色をつくっていくクリエーターによる決意を聞いたような思いがした。
都市計画を研究し「創造都市」についての著書もある大阪市立大学都市研究プラザ所長の佐々木雅幸さんは、大阪を日本における第二都市と位置づけながら、東京よりもバルセロナと比較して都市の在り方を検討したほうがより大阪らしいさを発揮できるのではないかと提言。
実行委員を務めるデザイナーの柳原照弘さんはgraf服部さん以降の世代として、エクスクルーシブではない、インクルーシブデザインを提言した。インクルーシブデザインという考え方はもしかしたら、途中から壇上の議論に参加していただいたDESIGNEASTの実行委員の一人家成さんが参加する大阪在住の建築ユニットdot architectsの建築手法に似ているのかな、と話を聞きながら僕は思った。
それはユニバーサルを標榜し、多様な価値観を認めることでむしろ使いにくくなったり、社会に適応しなくなってしまうようなデザインではなく、建物と住まい手が個の集合体としての家をともに建築しデザインていくようイメージ、といったらいいだろうか?
インクルーシブデザインは単なる多様性を認める(=多様性の受容)ことではなく、多様性が本来内包するはずの個別性を伸ばす方向に向かうべきだと思う。
現状のグローバリゼーションは金融により作られている。しかしそこに本来の多様性が根幹にもつはずの人間による知恵の積み重ねは、そこにある文化として認められているのか?経済力がなくなっている現状で、多様な価値観を認めながら個別性をそこなうのではなく、個=大阪が出来ることを、多様=日本・世界から考えること。今回の大阪デザインミーティングは、DESIGNEASTという名が示すとおり、大阪を舞台に大阪でしか出来ないことを考えるデザインイベントではなく、これも実行委員の一人原田祐馬さんがトーク終了間際に語ったように「イベントではなく、プロジェクト」としてこのDESIGNEASTが船出する、それを象徴するトークイベントになったのではないか。そんな風に思いを新たにした。