FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

...Design Addict 2 ...


『デザイン・アディクト』2号が発売になった。創刊号に引き続きお手伝いさせていただきました。前回はスウェーデンのデザイナーFRONTと、オランダのデザイナー、クリスティンとデマーカスファンの取材に同行、デザイナーインデックスを作成させていただいた。デザインアディクトは建築系の出版社であるエクスナレッジの出版物で、エクスナレッジといえば個人的には美しい写真とレイアウトが印象的だった『HOME』にはかなりの影響を受けた。デザインアディクトはエクスナレッジのK戸さんが編集長を務める、デザイン/アート/建築を横断する雑誌だ。今回は1号目のデザイン/プロダクトを中心に据えたものから、建築に重きを置いた構成になっている。
誌面から新たな発見もあった。巻頭の茂木健一郎さんと藤森照信さんの対談も興味深かった。

藤森氏の建築が、土俗的なものではなく、むしろこの地球の外、宇宙からやってきたUFOになぞらえられているのが面白かった。藤森氏の建築がもつ、屋根の傾斜や煙突などは正にモダニズムがその成立過程のなかで捨ててきた、地域性やそれに付随するにおいのような土着的なものを感じさせる。だからその建築は今の時代とも容易に結びつき、新しささえ漂わせている。

伊東豊雄さんの特集ページは、建築家で建築誌家である藤森照信さんが語る密度の濃いもの。身近で闘ってきた人だからこそ語りうる価値あるページだ。伊東さんの仙台メディアテークをコルビュジエのドミノの反転と評するくだりは刺激的だ。個人的には伊東さんの活動は'70年代がパワフルで好き。'70年代の内に篭った作風から、'80年代の外に向けられていく軽やかな建築、そして現在のSANAAなどに受け継がれていくガラスを使った虚実あいまいな空間。それらひと括りでは語ることの出来ない多様な活動を語ることが、実際に建てられた建築と人物に深みを与えている。

メインの企画である日本の若手建築家20人+αでは、石上さんや中山さん五十嵐さん谷尻さんなど、個人的にも注目の建築家たちを見ることもできた。これから家を建てたい、あるいは建築を見てみたい、といった建築初心者にも分かりやすい内容であった。

そして何より編集とK藤さんのアート・ディレクションの手腕の見事さには目を見張った。創刊号から確実に深化していた、ヴィジュアルの美しさ、そして読み物そのいずれもが充実の内容だ。たとえば一人ひとりの建築家の名前を分からなくても、これから知りたい、と思わせる分かりやすさがある。
今回お手伝いさせていただいたページでは、イタリアの建築誌である「カサベラ」を中心に、'60'〜70年代のイタリアのデザインと建築についての検証を行った。友人であるY本さんとS藤さんにもご協力いただき、密度の濃いページが作れたのではないかと思う。Y本さんとS藤さんには、ご自宅まで押しかけ貴重なコレクションを撮影させていただいた。その他にも植田実さんが手がけた建築誌『都市住宅』の特集や、『越境する建築雑誌を振り返る』のトビラのアートワーク、岡田栄造さんの記事など見所も多く、見ていて楽しくなれる建築専門誌だと思った。
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...souvenir from Design/Miami...
moss

デザインマイアミ土産に公式カタログやチラシをいただいた。今年のデザイン・マイアミは日本の吉岡徳仁氏がデザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞。記念のインスタレーションは大いに盛り上がったようだ。吉岡徳仁氏といえば日本でも、鋭い感性が冴える、アート性の高いプロダクトで知られる。イタリアのドリアデから発表されたチェアや、発売される前にMOMAのパーマネントコレクションにもなったauデザインプロジェクトの携帯電話機のデザインなど、世界中で近年評価が高い。
今年も目立っていたのが、スターデザイナーを起用したリミテッド・エディションの家具を発表した、モスやクレオといったトレンドに敏感なニューヨークとパリのデザインギャラリーだ。

近年勢いのあるアート市場の勢いに乗って、家具といったどちらかといえば日常的な工業製品を、あたかもアール・ヌーボーやアール・デコの時代のように芸術的な手法で解釈することを発見した手腕は見事というほかない。
美的な観点から見れば、日常使いの家具ほど日頃目に触れるものはないわけで、それを美しく表現したいといった欲求は、生活の豊かさには欠かせないものだ。
しかし、今回モスで発表された、スタジオ・ジョブの作品にしてもそれが家具か、と言われれば少し違うと言わざるを得ないだろう。
ジョブの表現は個人的にはひかれるものがあり好きなのだが、あのような表現が一部のデザイン好きを喜ばせる役目を担うことには大賛成なのだが、一般のデザインや家具好きの目から見れば、滑稽なものに写りかねないのも事実だと思う。
というかあれは紛れもなく家具ではないのだが。

プロダクトが生まれる背景に在るデザイナーと職人という関係。それはアートがデザイナー自らの手で生み出す純粋芸術であるのに対して、デザインとはそれを作らないという点において、デザイナー自らが己が作品に対してある一定の距離を置いているように見えるせいかもしれない。しかし周知のようにアートも既成の事物に働きかけるための、アジテーションのようなものになりつつある。それは良くも悪くも私たちが大好きなポップアートが生み出した功罪でもあるのだが。

アートとは異なりデザインがある特定のジャンルに留まらず、あらゆるものに適用可能であることは、デザインのあるべき姿を表していて興味深い。デザインは人の思考と、物のありかたを根源から結びつける抽象的なものだ。だからこそそれは人間の在り方に拠り所を求める。言い換えれば人間の実存そのものに結びついてこそあるべきものだ。
アートをデザインに結びつけるなら、いっそうのこと、潔くアートと呼んでしまったほうがいいのではないだろうか?人が意図的に生み出すデザインというものは、根源的な美的な感性を刺激しながら、もはや既にデザインはアートに繋がっている。

しかし、現在のプロダクトデザイナーたちは、自らのことをアーティストといわないからなおしたたかだ。
産業革命以降、アートは一部の特権階級のためのものだけではなく、より自由なものになった。20世紀に入って興ったいくつもの芸術運動、ロシアアヴァンギャルドやキュビズム、シュールレアリズムやデ・スティルの動きなど、それらはいちいの名もない自称芸術家たちをも巻き込みながら、自らを淘汰し新しい潮流をつくりだしてきた。
おそらく、現在のアート/デザインの流れも十数年後、遅くとも数十年後にはデザイン・アートという名で語られる芸術運動のひとつに数えられようになるだろう。

追記:建築もデザイン同様、アートに近づいている。アーキテクチャー/アートも今もっとも熱いテーマの一つに違いない。
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...師走
un
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...LORO, SAB LETTERPRESS...
LORO

友人の愛猫デビくんがモデルをしているという、monoマガジン特別編集インテリアライフスタイル誌「LORO」を見た。今号ではオランダのデザイン特集のページがあったので買ってゆっくり見ることに。
掲載されていたオランダ人デザイナー、リチャードハッテンが息子と住むアパートはカッコ良かった。同じオランダのデザイナー、例えばマルセル・ワンダースやマーティン・バース、ヘラ・ヨンゲリウスやテオ・レミといった彼の友人たちが手がけるプロダクトが並んだ部屋は、さながら現在世界を牽引するオランダデザインのミュージアムのようである。中でもテオレミの一般的には値の張る、ドロワーチェストの使い方は気取りがなくて共感できた。

最近のファッション誌にしてもインテリアライフスタイル誌にしても、その誌面作りの背景にいる編集者のコトにまつわる視点や、モノを集めるインテリアスタイリストと呼ばれる人たちの仕事ぶりが気にかかる。
雑誌にしても書籍にしても、誌面作りを支える裏方であり、重要な主役でもある彼らの視点ひとつで、出来上がりが左右されることはいうに及ばず、文化といったその国のカルチャーの動きや方向を示すという点においてもその責務は重い。
それがどんな興味の対象であっても、媒体の名前、書き手や選者の名前が出る以上それぞれ見識やセンスが問われる。
それはさておき、インテリアやライフスタイルを雑誌で見せるという点ににおいてやっぱり素晴らしいなあ、と感心するのがインテリアスタイリストと呼ばれる人たちの仕事ぶりだ。

その時々の話題にあったモノの収集は、日頃から興味のはばを効かせたアンテナを張り巡らし、モノとの出会いと人との信頼ある関係性の上にこそあると想像する。
目当てのデビくんとは、スタイリストの作原文子さんがスタイリングを手がけたインテリアと雑貨のページで出会うことができた。
いつもこのようなページを見ていて思うのは、まさに何気ない日常のひとこまを切り取ったかにみえる風景にこそ、その背後に卓越した人の手仕事が潜んでいるということ。
その中でも作原文子さんの仕事は、どの雑誌での仕事を拝見しても、独自のクラフト感あるエッセンスが感じられて、すぐに彼女の仕事と解るという点において極めて優れたものだと思う。

それはまた自分の感性を支えてきた、ポパイやオリーブとともに過ごした十代、そしてその頃に馴れ親しんだ、フランスの哲学や文学のかおりも感じられ、極めて個人的な感傷にひたることのできる、もっとも身近なものでもあったりする。
同じページで文章を手がけている編集者のヤマムラさんも以前お世話になったことのあるゆかりのある方だ。
ヤマムラさんはその昔、サマーストアという鎌倉系リトルプレスにも参加されていて、今思い出すと、懐かしくも感慨深い気持ちがわき上がる。
そのページに印象的に使われていたポストカードは、活版での印刷物に特化した活動を続ける、サブレタープレスの手によるクラフト感あふれるプロダクト。
現在は千駄ヶ谷に活版による印刷も請け負うショップ、パピエラボをグラフィックデザイナーの友人、クリエイターのパートナーと共同で運営している。

パピエラボは印刷方法としては手間のかかるもので、現在では他の印刷技術に淘汰されつつある、活版印刷の工程による丁寧な手仕事感あるアイテムに定評のあるショップだ。
しかしサブレタープレスが生み出すものは活版印刷と密接に関連していながらも、その枠におさまることのない自由なものだ。それは柔軟な発想力と興味の広さ、そして行動力が伴った、一見過剰ともいえる好奇心に由来するものだ。今あたりまえにある目の前のものに、敏感に反応する感性は、今という時代の微妙な空気感を反映した、新しいモノやコトを生み出しうる新鮮な原動力に充ちている。
それだからサブレタープレスの本当の興味は、彼女が日々出会うモノやコトがはらんでいるところの、人々の心の機微に似た微妙なニュアンスなのかもしれない。
もしサブレタープレスの作るものが、今の時代にあたりまえになかったとしたら。それは少し味気のないものになりはしないだろうか?そんな想像を抱かせるくらい、今わたしの身の回りには彼女が手がけるプロダクトはあたりまえに存在している。


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...Design Miami 2007...2.
アートが一部の投資家のビジネスの対象になる現象は、日本では好景気に湧いたバブル時期に、海外の古典名作絵画が世界のアート市場が驚愕するほどの高値で買い付けられた現状から一般的になったが、それ以前にもある種の芸術とは一部の投資家やパトロンと呼ばれる資産家のものであり、そのような現実がなければ今私たちの目の前にある古典絵画はうまれえなかった事実がある。
現在、未曾有の好景気の中にあるといわれている、中国の市場においてもコンテンポラリーアートが投機の対象になり、世界的にはまだ価値の判然としない若手の芸術作品も、将来の値上がりを見込んで高値で取引されている。
また一部の芸術家はそのような資産家に買われ、将来の古典になるかもしれない作品を資産家のためだけに個別に作製している。

デザインマイアミより1日先駆けて開催されるアート/バーゼル/マイアミビーチが今年の最後を締めくくるかたちで早くも話題を呼んでいる。今年6月のスイスのアートバーゼルでリミテッドエディションのハイエンド家具がデザイン界の話題をさらったことは記憶に新しい。
デザインマイアミが初めて開催された2005年頃にデザインがアートと同価値にビジネスの対象としてビッグマネーを生み出す対象とされてから、デザインのアート化は表面上活性化した。その流れは一般の人々の暮らしからかけ離れたところにありながら、わずか数年でアートとは無縁の、裾野にある人びとの暮らしを間接的に豊かにするものとしての、一般向けのインテリアデザインに落とし込みがなされ、新しいプロダクトデザインというかたちで市場に流通する先駆けを作った。

でも一体アートとデザインにどのような違いがあるのか?日用品をデザインしようという思想こそ、そもそもアートなのではないか。それはアートイベントを見れば多少明らかになるのだか、アートには道具としての機能性はない。道具をアートに取り込む作業は、マルセル・デュシャンやヨセフ・ボイス、アンディ・ウォーホールらのアートの手法にしばしば見られが、芸術品単体を日常の道具に取り込む作業はありえない。その方法論の違いこそがアートとデザインを区別しているところだろうか。

今回のデザインマイアミのプレヴューを見た限り目に付いたのが、ファインアートの感覚でコンテンポラリーデザインを手がけるNYのmoss、フリードマン・ベンダ、パリのギャラリークレオだ。
そのなかでも気になったのがmossから発表されるトム・ディクソンのデザインだった。あの木目の天板を持ったテーブルなどは、現代のハイエンド家具の流れを象徴するものとして目の肥えたコレクターや投資家たちに驚きを与えるに違いない。それとイタリアを代表するプロダクトデザイン界の重鎮、エットレ・ソットサスの引く手あまたの活躍ぶりも目を見張るものがある。
ともかく今後のデザインとアートの流れを変えるかもしれない、デザインマイアミの動きから今年も目が離せない。

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...Design Miami 2007...1.
design mimami

今年で3回目の冬を迎える、デザインの展示会デザインマイアミ。2002年にアートバーゼルのアメリカ版として開催された、アート/バーゼル/マイアミビーチ。この世界中のギャラリーが集まってアートを展示販売するアート/バーゼル/マイアミビーチから生まれたのが、今年も7日から9日まで、アメリカのマイアミで開催されるデザインマイアミだ。
マイアミでは11月にも建築とランドスケープデザイン、インテリアデザインのフェア、マイアミビエンナーレが開催されたばかり。
1年を通して温暖な気候の高級リゾート地として知られ、私の世代では「マイアミ・バイス」というアメリカの刑事ドラマでもなじみの深いクルーザーが停泊する美しい湾をもつ町だ。
1920年年代に建設された歴史建造物を会場に開催されるデザインマイアミは、またこの地の歴史的建造物とデザインの新しい関係を構築するものであるともいう。会場には世界中からのコレクターやバイヤー、そしてその賑わいやモノ珍しさから観光客が集まる。

デザインマイアミにはアート/バーゼル/マイアミビーチと同様に、厳しい審査を通過した世界屈指のデザインを扱うギャラリーが出展することで知られている。
今年で3回目、毎年6月にスイスのバーゼルと合わせると今回で6回目ということになるのだろうか。毎年12月に選出されるデザイナーオブイヤーには、2005年に建築家のザハ・ハディト、昨年2006年にはガーゴシアンギャラリーから作品を発表したことでも記憶に新しいマーク・ニューソンが受賞。今年はなんとauの携帯電話のデザインが話題になった、吉岡徳仁の受賞決定が秋頃から日本のメディアでも話題になった。6月のバーゼルでは、新進デザイナーに与えられる賞、フューチャーデザイナーが選出される。

この風光明媚なアメリカの高級リゾート地で開催されることになったアート/バーゼル/マイアミビーチに刺激を受けるかたちで、2005年12月に開催されることになった、デザインマイアミは、アンブラ・メダ氏とエイミー・ロウという2人のディレクターが中心となり、マイアミ屈指のデベロッパーとコレクターの賛同を得て開設。その後それに賛同するかたちでパリのギャラリー、パトリック・セガンとギャラリー・クレオ、アメリカのmossやバリー・フリードマンの協力を得た。翌2006年6月にはスイス・バーゼルで開催される、すでに30回以上の開催を誇る本家アートバーゼルでも開催、6月と12月の年に2回の開催を定例化している。

デザインマイアミはアンティークと呼ばれる歴史的なマスターピースと、限定品というハイエンドなアートピースとしての家具を、そこに参加するギャラリーとともに新しい価値を構築するものとして、現在世界中のコレクターや投資家の注目を集めている。

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Design Miami
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