今年のミラノサローネで一部の熱狂的なデザインフリークをもっとも驚かせたものは、ドローグデザインが発表したStudio Libertinyのミツバチの巣のベースbee vaseだろう。
それはいわゆる人間が作る人工の自然物と呼びうるもので、40,000匹ものミツバチをひとつの目的のもとに収束するという野心的な試みでもある。
それがよいデザインで、そして実用的であるかはこの際少し脇に置いて考えてみたい。
ミツバチの巣のいわゆる六角形は他の多角形よりも構造的に理に適っている。
六角形はそれを型作るための材料を最小限に抑え、その内部構造は広く、そしてそれが積み重なり、一定のスぺースを作るのにちょうどよいのだ。
そしてそれは他のどの多角形よりも積み重なったときに強度がある。そして六角形が重なり合って出来た構造のことをハニカム構造と呼ぶ。スペースシャトルや人工衛星などにも応用されているものだ。
ミツバチが手がけるこれらの過程はTomas Gabzdil Libertinyが言うところの「スロー・プロトタイピング」とは、コンピューターの力を借りて機械化されたプロセスを経て完成するラピッド・プロトタイピングとは双璧をなすものでもある。
蜂の巣の形に浮き彫りにされたワックスシートはミツバチたちがベースを作ることを手助けしたようだ。
その上で4万匹のミツバチたちが1週間掛けてこのベースを作りあげるという。
しばしばミツバチたちは巣作りに熱中するあまり、Libertinyがミツバチたちを完成したベースから引き離すときには攻撃的になったという。
少なくともこのミツバチたちが手がけたベースには他には思いもつかないような詩的な発想がその発端にあったことは間違いがないようである。
photo: http://designtrotter.areablog.it/droog-design-milano-2007
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