文字は不思議なニュアンスを言葉の意味に付与する働きを持つものだ。言葉はその切実な伝達手段のひとつとして文字を必要とするが、それは意味を先に持つのか、それともかたちを先に持つものなのか、それはその原初の姿をたどる厳密な意味での不思議な旅を経由する意味を探る道程に他ならない。
そんなことを考えるようになったのも他ならぬ、文字の不思議さに出会ったからなのだが、それは自分の書いた言葉が印刷され、文字になりかたちをあらわす時にまるで異なる力を得てうねる点と点の重なりのなかで線になり糸になり文字に化ける、力の濃さを見たことに由来する。
手書き、コピー、ワープロセッサー、写植、転写、オフセット、活版、さまざまな印刷の言葉がたどる運命のなかで、ことに活版印刷は独特の深い感性を文字に反映させるという点において強力な磁場を持っている気がする。それというのも自分が発した言葉を文字にしはじめて活版印刷に力を借りた自らの言葉に、今までに感じない奇妙な印象を体験したからだ。
そんな活版印刷を巡るショップがオープンして数ヶ月、さまざまなよい化学反応を起こしながら人々の間に浸透しつつあるようだ。
それはそこに関わる人々をも新しい関係性のなかに取り込みながら。
*活版印刷についての記事はこちらをご覧下さい。OPENERS
*カタログ「man made stone objects」