ル・コルビュジエ、シャルロット・ペリアン、ジャン・プルーヴェ。彼らは同時代にあって異質な存在同士だったのだろうか。
彼らが共同で、もしくは個別に作り出した建築やその室内装飾を見るとき、 われわれはその素材やかたちのバラエティの豊かさに驚かされる。彼らが創り出したモダニズムの歴史はたとえようもなく豊かな時代を築いた。
彼らが用いた鉄やコンクリートといったマテリアルは当時の先端素材であり、それを加工するすべは設計やデザインのなかから生まれてきた時代である。
薄い鉄板を曲げ強度を保ち、木材の強度を精緻な構造で作り上げる。それら構造がむき出しになったさまは無骨で、ものそのものの美しさを強調しているようにも見える。
プラスティックやコンクリートは色づけされており鮮やか、鉄のパイプは錬金術師のような手法で曲げられ、美しいひだをを与えられる。それもこれもすべてコストであったり強度といった実用の要請にもとづいている。
先日移転オープンしたサインはそんな鉄や木が夢を持って語られていた時代の、美しさをもった家具を扱うショップだ。
それらは使うためにそこに運ばれ、そして人手に渡っていく。それは単に美的価値だけのために扱われることの多いそれらの時代の家具を、本来の目的にそって再生させる作業であるともいえる。
家具を投機目的に買う人びとがいる。その一方でそれらの時代に憧憬と愛着をもって救い出そうとする人びともいる。彼らはおしなべて日常生活者としての使命をまっとうしている人びとだ。先達たちが共働した時代は建築と室内装飾品が同じ人間の手で同じ価値観をもって作られた最後の時代だ。
それらが作られた往時をしのばせる4階建てのモダニズム建築の1階と2階を新しい店舗にしたサイン。1階右手にはプルーヴェのステップのような鉄と木の階段があり、2階の壁にはガラスブロックがはめられている。それがまさに古きよきモダンの佇まいを醸し出していて、そこに置かれているオブジェのイメージと見事に重なる空間構成の重要な要素になっている。
プルーヴェ、ぺリアンそれぞれもしくは共働の家具や、ル・コルビュジエの建築のための家具は言うに及ばず、フランスの謎めいた陶芸家ジョルジュ・ジューヴやセルジュ・ムイユのオリジナルのランプなど見どころも盛りだくさんのショップだ。
SIGN 3-2-13 Hiroo,Shibuya-ku,Tokyo