古典的な様式の家具は紙とボール紙と軽量のハニカム・パネルから出来ている。
ステュディオ・ヨブがmoooiから発表したペーパー・ファーニチャーは、その重量感溢れる佇まいからは想像出来ないが、ペーパー=紙で覆われている。紙は我々日本人には生活の道具の中に、それを取り囲む家具、そして室内装飾にしばしば使用されるマテリアルで、決して奇異なものでも突飛なものでもない。
しかし常に重厚感のある従来の西洋家具の中にあっては、その存在自体が異質であると言わざるを得ない。
そして今回ヨブがペーパー・ファーニチャーで具現化したものは、大小のシャンデリア、ヨブの作品にはしばしば見られるカントリー調のカップ・ボード、テーブル、キャビネット、クラッシックなスタイルのビュッフェ、ウォール・ミラーなど。
それらはハニカム・パネルをベースに、ボール紙を貼り付け成型し、その上から小口の長方形にカットされた紙を丁寧に貼り合わせてゆく。近づいて見てみるとその紙の張り合わせ具合がちょっとした装飾の様に見えて実に美しい。
そして貼られた紙に日常の使用に耐え得る強度を施す為に3層ものポリウレタンが、デリケートにブラシによって丁寧に塗られる。
その作品にあってヨブの手によって形を与えられ、具現化されたファーニチャーは時間のズレと空間の歪みを内包し、かたちそのものに意味が備わらなくても、ファーニチャーに付与されるイメージが現実の物として如何なくその存在感をアピールする。
ヨブの作品に見られる時空のズレは、しばしばそれを見る者にファンタジーと畏怖の感覚を抱かせるが、それが現実の消費される物と対置される時、他の消費される物には終ぞ見られる事のない、消費される物ゆえの逞しさを備えているように見えるのは何故か?
それは現代に生きる我々が豊かさの中に見失った豊かさの亡霊を捜し求めている限り決して見つける事の出来ない何かであろう。