メンデルツマはアムステルダムのオークションで購入したこれら3264のアイテムを、その形態的特徴と用途、そして具体的な色と物質的分類とに分け、独自の方法でリサーチする。
このアート・ブックの為に選りすぐられた没収品は色と形に特徴はあるものの、上着のポケットの中にそして家庭のダッシュボードの中に、我々が日常使用している何気ない風景の中にこそあれ、格別暴力的なシーンに適応する為に開発されたものばかりではない。
それが恐ろしくも不可解にも感じられるのは、見慣れた日常の中に潜む悪意と呼べるようなものが、もの本来の価値と使用目的とかけ離れたところで、異なった意志と価値を有してしまうことの意味を暗黙裡に我々が気付いているからに他ならない。
それらスキポール空港で没収された危険物と見做された搭乗客の持ち物は、あの9.11以降暴虐に満ちた人間の悪意が世界中に拡散する事を未然に防ぐ為の、あまりにも神経症的な自己防衛本能から生まれた人間の深層心理を探り当てる為のメンデルツマの一つの明確なリサーチの賜物である。
何気ない日常品がテロリズムを喚起させるという、それが暗喩するものは極めて重大で、ひとりクリエーターのアート作品の為のコンセプトであると看過することの出来ない21世紀を生きる我々のための重要な命題を孕んでいる。