ブルレックスの作風は牧歌的で叙情的、詩的な風情に溢れ、時に抑制されたニヒリズムに充ちていながら、ストイックな精神性を感じさせる。
それは彼らの師であるジャスパー・モリソンのスタイルにも通じるのだが、モリソンが時に狂気を孕んだ日常の何気ない風景の中に黒い野生を見るのと同じような感覚で、ブルレックスの二人も日常の狂気を、詩的な風情の中に内在させる事に長けているように見えるのは偶然ではない。
ジェネレーションの違いは、異なる生活様式を修練させ、そこに暮らす人間の内に秘めた無意識までをも、異なる時代、異なる国に沿うようなかたちで形成させるが、いつの時代も天性における天才はそれらの異質な時代の空気感を見事に読み取りながら、自らの思想に反映させる術に長(た)けている。
それだからこそ彼らの作品に表出し、そしてその中に内在される機能性とロマンチシズムとは相反する物ではなく、かたちを付与され、生き生きとした物としての喜びに充ち、ものとして天寿を全うする生命力に溢れている。
コンパクトで自由度の高いフレキシブルな彼らの代表作の一つ、フランス語で海草の意味を持つAlgue=アルギュは、単体で一つの完成されたオブジェの様相を呈しながら、複数を連結することによって様々な形状を持った生き物の集合体にも、それ自体が一つの生命の躍動のように見えるという、それぞれ一つを取ってみるとモジュールの概念を有効に表現する為の規格化された単純な構成要素でありながら、この世の何処にも無い、他に類をみない奇妙なオブジェになる。
生命は混沌の中の単純化された原初的で複雑な構成要素の結合の果てに生まれたと仮定して、我々が知りうる生命の誕生の概念は、祝祭の空間にも似たハレの場を生む、極めて野生の思考に従った本能的な知の中にしかない。
ブルレックスが創造するところの神秘的な美に満ちた空間構成は、そのような野生の思考という知に従うところの本能的な構成力によるところが多いとすれば、我々は自らの空間構成に彼らが生み出すたった一つのオブジェクトを、ただ備え付けるだけで、有機的で美的な居心地の良い空間への躍進的な第一歩を踏み出す事になると言えはしないか。
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