FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

...Crafts and machine..Judith, and Verhoeven brothers.

lace fence2
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..layers...hella jongerius...2006..2-2.
lay

ヴィトラ社からのたってない要望から生まれた名作Polderソファではあるが、彼女は当初ソファの製作にかってないほどの困惑を込めて難色を示したというが、ヨンゲリウスが示すところの『必要悪』のソファも心から寛ぐ為には必要なものであり、ヴィトラ社からの率直な提案で彼女自身が本当に欲しい物を作るというもう一つのコンセプトに従って生まれたのがこのソファであったという。

同じくヴィトラ社から今年のサローネにて発表されたばかりのユニークな形状のバックレストを持つアーム付きのシングル・タイプ・ソファ『ワーカーズ』をベースに、今回の展示の為に、旅するバックパッカーのような、このソファには一見不釣合いなミニチュアのブロンズ製のオブジェを付属した巨大なキャビネットを、個性的な形状のバックレストに、これまた不安定にして不自然に取り付け、アーティスティックな奇妙なバランス感という統合をもたらしているシングル・エディション作品、その名も『Backpacker』ソファを発表している。

ウールにポリエスティルの糸で手刺繍を施し、ティヒラー・マッカムでの陶器作品、red/white vaseにインスピレーションの源を持つ、今回の展示の為に製作されたクッションも、LAYERSテキスタイルをふんだんに使用しており、その貴重なテキスタイルをキルトの手法で縫い合わせ、巧妙にヨンゲリウスの名作陶器red/white Vaseの形状を忠実に模倣している。
それらがサークル模様のテキスタイル、チェック柄のテキスタイル、時にそれらのミックスで縫い合わされる時、ヨンゲリウスが跪き、彼女のアトリエの床の上で様々な文様を紡ぎ出す様が目に浮かぶようで実に楽しい。

ヨンゲリウスは作品対して真摯に、時に厳しく取り組む様は作品集などで見る事が出来るが、彼女はテキスタイル作りに対して並々ならぬ情熱を持っている事がそこからも伺い知れる。

New York Design ウイークと同時期に開催され、L.Aでもダッチ・デザイン展が開催という事もあり、アメリカでのミッド・センチュリー期のファーニチャーへの再発見と重なり、表現に表れるスタイルは異なるもののコンセプトや素材への実験的精神に近しいものもある現代オランダ・デザインの動向は、アメリカのギャラリーやミュージアムも必然的に敏感になっているようである。

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..layers...hella jongerius...2006..2-1.
jack pot

フェルトと羊毛の織物の『レイヤー』で仕上げられ、ポリエステル糸で一針一針手刺繍が施される。
以前からヴィトラ社へのテキスタイルの提供で知られるアメリカのテキスタイル・メーカー、マハラム社とMOSSギャルリー、そしてヘラ・ヨンゲリウスが3年掛かりで研究・織り上げた、実験的なテキスタイル作品そのものをコンセプトに持つ、New YorkのMoss Galleryで開催されたエキシビジョン『LAYERS』は、まさにテキスタイルが絵画作品と同じハイ・クオリティなレベルで語られることを促す一つの指標となり得る、ヘラ・ヨンゲリウスの一貫した創作のプロセスをその背景に持つ大胆で野心的な作品群である。

既にマハラム社とのコラボレートによるテキスタイル作品には昨年MOMAのパーマネント・コレクションにも選定された2002年の『Repeat』があるが、リピート巾の極めて長い個性的なそのテキスタイルは、壁にかけるタペストリーのように、繊細で文化的に多様な伝統を生まれ以って兼ね備えている古代の織物のようだ。

今回合わせて発表されたティヒラー・マッカム社による幾つかの陶器によるレア・ピーズは、新作テキスタイル『LAYERS』のコンセプトを巧みに陶器作品作りにも応用していて、実にアーティスティックな方法でまったく新しい陶器作品に仕立て上げている。

『Jackpot field』と名付けられた、2005年にドイツのヴィトラ社から発表されたPolderソファのリピート作品にあたる巨大なソファは、Polderの、ソファのあるリヴィングにありがちな、そのどっしりとしていて移動に容易でないソファのある日常の決まりきった風景に対峙するところの、日常に安住しない為の機能としての長椅子、というコンセプトを引き継ぎ、更に進化した形態といえるものであり、『Jackpot Field』の名前の通り、Jackpot vaseと名付けられたスケール感の崩壊した巨大なアースウエア=陶器、という今回のLayersのコンセプトに従った艶出しされた内部構造と、ブロンズ製の大きなメダリオン=象徴をレリーフした装飾を持つ作品と、それを鎮座させる為のオイル・フィニッシュドされた艶やかなウオールナット材の見事な引き出し付きのサイド・テーブルを持つ。

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...Kurt Schwitters...merzbau...2-2.
ksters

視覚的言語=グラフィック・デザインの重要性を唱えた、ロシア・アヴァンギャルドの中心人物、エル・リシッキーが当時親密に関わった人物は、後にバウハウスの重要人物になる者が少なくなく、その中にはヨハネス・イッテンの後継者として重要な仕事を果たした予備課程のモホリ=ナギや、1928年にグロピウスが退いた後のバウハウス校長となるミース・ファン・デル・ローエがいた。

バウハウスと直接的な関わりこそ持たなかったが、リシッキーはシュビッタースと深く関わり、当時高難度の結核療養中にも拘らず、構成主義者として『メルツ』の編纂の職に病床から携わっている。
プロウン、と纏め称される彼の構成主義作品群は、建築と絵画を往復する芸術の未来系を標榜していた。

シュビッタースはベルリンの西、ドイツ北部の町ハノーヴァーの出身で、廃棄物から芸術作品を生み出すという、その反芸術的行為から、ダダの中でも極めてダダ的であると評され、当時のドイツでのダダの活動の中心的人物である。

二つの大戦を挟む動乱と自由が往来するヨーロッパにあって、芸術家は未来に希望を持つ事によって現在の悲惨を逞しく生きようと試みたのであり、それは芸術表現こそが現状を打破する為の爆弾になることを世界中に示した。
迫り来る黒い影に怯え萎縮するのではなく、暴言・暴力の類いこそが現状を破壊する為の手段になり、メガホンはただ単に音声を拡張する道具ではなく、レディメイドのオブジェクツに変化する。

芸術家にあって自由とは、それを求める為には祖国を、大陸を離れる事をもいとわぬ究極の言説になる。

新聞の切抜きや、広告、アジチラシの類まで、あらゆるものがシュビッタースのコラージュの対象になり、シュビッタースのアパルトマンは彼の廃棄物による建築群の実験場になり、時にそれは玄関先まで溢れ出したという。
建築こそが究極の芸術表現であると、シュビッタースはメルツ・バウを標榜し、差し出されたキャンバスにクルト・シュビッタースをではなく、メルツと書きなぐる。
帝国の崩壊、革命、二つの世界大戦をはさみ思想的にも混沌とする当時よりも、価値観の多様化した現代、私にはシュビッタースの作品群は既成概念を爆破する爆弾としての価値を持つように思われてならない。
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...foo...words with.....
foo



http://www.foo-zakka.com/

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...thrift and creation...piet hein eek.
phe

photo: http://www.pietheineek.nl/
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...Kurt Schwitters...merzbau...2-1.
k・s


タイポグラフィーをその芸術的表現の要素の中心に据える事は、活字をこそ記事として捉えるという点において新聞(ジャーナル)的である。
それは日々更新される情報であり、偶有的な事柄に対処する為の芸術家の処方箋でもある。

1923年に先にデ・スティル誌を創刊していたドゥースブルフに刺激を得て、『メルツ』誌を創刊したクルト・シュビッタースは、構成主義的な文字組みと、挿絵や写真ではなく文字をダダ的なセオリーに従って芸術表現にまで高めていく事に専心する。

それはまた、バウハウスが写真をコラージュによって新しい芸術表現の手段として格段の進歩に導いた事と同じように、ダダは文字をコラージュする事によって、芸術表現の域にまで一段引き上げた。
それはロシアのマヤコフスキーの詩に見られるような、文字を感覚的に自らのポエジーに従って恣意的に配置した事とも相通じる詩的なものだ。
余談だが、マヤコフスキーはその頃、リシツキーと高度な印刷技術を誇っていたベルリンで構成主義的な視覚言語による詩集の出版をしている。

メルツの枠組みの中で、シュヴィッタースはメルツ詩・メルツ構成物(メルツ建築)・プリミティブな原初的な音響(メルツ楽)、メルツ活版印刷、など様々な有形・無形の孤高の芸術活動を展開していく。

後のヨーロッパ統一に先駆ける事80年余り、ダダイスト達はヨーロッパをその無軌道で自由な、時に極めて政治的なその運動によって統一したともいえる。

ゴミを漁り、ゴミを集めてゴミ屋敷なるものを、構成主義的に構築したシュビッタースの偉大とすらいえる作品群は、ナチスによって退廃芸術として扱われ、ことごとく破壊され尽し時に不健康で異端、として晒しものにされた。

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...Papier colle...Kurt Schwitters...
Papier colle
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...talking about a ...hella jongerius.
talking about a...





photo: moss gallery.
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...story of things...front...3.
front

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今年のサローネでmoooiから発表されたFrontの新作『Animal Thing』はそんな彼女たちの動物達への、現在に於ける最大のオマージュが込められている野心的な作品群である。実寸大の巨大な馬のフロア・ランプ、野うさぎのデスク・ランプ、そして仔豚のトレイはそれぞれ影のような黒塗りで、自然と共に森の奥深くで暮らす野生の動物たちと、偶然出くわしてしまったかのような驚きと、感動を呼び覚ましてくれる作品である。
野生の動物たちとの暮らしが可能なら、もし部屋の心地よいソファに腰を掛けながら動物達と語らう事を望むなら、その傍らに巨大な馬のフロア・ランプを置くといい。
日常から逸脱した行為は時に我々に巨大な犠牲を強いるが、『animal thing』の動物達は愛らしく力強い形態で日常の労苦をねぎらう為のオブジェになる。

彼女たちの作品作りに於ける思想は、明確にその作品に見て取ることが出来るように、日常の中にある非日常、ユニークであることのヒューモアを標榜し、その思想を作品に反映させることであり、あてこすりではなく、作品を市場原理に従ったところで消費者のニーズに的確に応えながら、マス・プロダクトとしての使命を全うすることであったり、マス・プロダクトであることの束縛から逃れることなく、消費者心理を自らの作品作りの思想に配置転換し、イマージュを拡大していくことの作業の中に、的確な消費者のニーズを引き出すことである。

巷に溢れているユニバーサル・デザインについての研究、2005年のプロジェクト『story of thing』での100にも及ぶ、日常生活を彩る具体的なサンプルの中から、消費者に於ける消費行動と物との関係についてのパーソナルな探求を経て、多様なニーズを紡ぎ出すFRONTの創作理念は、現代生活の、多様なカテゴリーの中から単純化され得る普遍的な命題を導き出す為にではなく、物本来のありようを浮き彫りにする為に、機能やデザインに偏重した物の価値体系の構築を崩すことから見えてくる、それらの本当に有意義な存在価値を築き上げる為の、地道なリサーチの賜物なのである。


photo: story of things. Front.
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