FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

what a wonderful world....campanas.
campana


















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Rough-and-Ready...Tord Bootje.3-3
Rough-and-Ready2-2


1999年のRough-&-Readyプロジェクトは、巧妙にデザインされた、高価な家庭製品に対するアンチテーゼとして、その頃彼が妻のエマと熱中していた、リサイクルされたマテリアルを使用した一連の家具作品である。ボーンチェはそこで、完成された家具=既製品ではなく、設計図のみを(組み立てキットのようである)無料で提示することによって、この様な時代にあって高価な贅沢品である、作家性のある作品を、ロー・コスト(コストレス?)で提供することを試みた意欲的な作品である。
そこには、リサイクルされた木材と、古い幾つかのブランケット、そして梱包用のビニール紐があるだけだ。
のちに彼は自身のそのプロジェクトを、ロー・テクで簡素なもの、と表現している。

椅子とテーブルとキャビネットのRough-&-Readyコレクション、そこには後の、彼のロマンチックでいて華美な装飾を施されたイメージは皆無で、むしろ質素であり、まるで学校の実験室か、オフィスの倉庫のような、ミニマルな雰囲気を漂わせている。
消費者はそれを自分で組み立て、もし求めるのならば自ら修理をし、再び分解してリサイクルする事ができる。
現代において消費者は、大量の物の中から製品を選ぶ自由を与えられ、選択肢は無限に与えられているように見えるが、むしろ選択肢は狭められ、我々はマス・コミの情報に左右されながら消費の飽くなき連鎖の中に一つのシステムのように組み込まれている。
現代社会に於いて消費される事は避け得ない事実としてある。その思想・風潮はリサイクルの連鎖の中には決して組み込まれる事がない。
生産と消費の繰り返しである現代社会にあってプロダクト・デザイナーのおかれた立ち位置は、その消費の連鎖の中にあって継続して作品を作り続けることか、その状況に一石を投じる一か八かの賭けを仕掛けるしかないという状況に置かれている。
彼はその作品に於いて、選択の余地を与えることと(いわば設計図を与えられた者には、作る事と作らない事の選択の余地さえ与えられている)、消費されること=非リサイクルの連鎖を食い止めたかったのかもしれない。

おそらく現在において彼のもっとも有名な作品はハビタから2003年に発表され後にArtecnica社(カリフォルニアのデザイン・カンパニー。ボーンチェの他の多くの作品から、日本の村上隆氏の作品、主に繊細な美術作品を取り扱っている)から発表された『Garland Shade Light(ガーランド)』であろうか?
それは先に発表された『Wendenesday』の廉価版であり、高名なアーティストの作品で、しかもこれだけ美しく独創的な作品が手頃な価格で手に入れることが出来るのは我々消費者にとって幸運な事である。
真鍮製のシートの上にカッティングされたボーンチェの花々は、日本の生け花の手法のように、慎ましやかにそれを手に取り、それを生けるものの手に委ねられるままの野の花のように受身でいて、それを手にする者のその時の精神状態さえをも映す写し鏡にもなる。

彼は現在新たなプロジェクト、プラスチックの生産の技術の応用に関する研究と、スワロフスキー・クリスタルを使った自身の作品のバリーションの開発に、彼の新しいフランスの山奥深いアトリエで、3人のアシスタントと共に没頭しているようである。

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Like a Wednesday... Tord Boontje 3-2.
Wednesday Table


トード・ボーンチェは工業的なプロセスで大量生産された、誰もが気軽に手にして、家庭で楽しむことの出来る『ガーランド』のようなプロダクトと、実験的なスワロフスキー社の為の大掛かりなロマンチックなプロジェクトとの間に、インダストリアル・デザイナーとしての一つのいきかたのバランスを楽しんでいるように私には見える。
ボーンチェにとってもクラフトも、インダストリアルも余り関係がないようである。
実際、彼は2つのデザイン・アカデミーで工業デザインを学んでいるし、ハイテク素材に果敢に挑戦し、コンピューターの生産のプロセスによるイメージの大量増殖の夢も、彼を表現するものは極めて現代的なアプローチであり、先端の生産プロセスを使いこなしていくだけの柔軟な発想力を兼ね備えている、極めて現代的なデザイナーなのである。
彼は一個人の頭の中で生まれた小さなインスピレーションが、工業生産のプロセスを経て大量生産され、増殖していく過程を楽しんでいるようでもある。それは彼の作品に於いて繰り返し表現される自然の草花や森深く暮らす動物たちの夢をみるようなイメージを見ても明らかであるように思われるのだが。

ボーンチェにとってガラス作品とは、彼の伴侶であり、ガラス作家のエマ・ウッヘンデンの事を意味し、その事は彼のガラス作品の殆どのものが二人の連名作品である事からも判る。
リサイクル・ガラスを使って作られる、ボーンチェとエマの初期の作品『transglass』は、リサイクル品であるワイン・ボトルやビールの空き瓶を再利用する事を目的に製作されている。 一つずつ丁寧に職人の手によって繊細にカットされ、エッジを綺麗に磨かれ仕上げられたガラス作品は、北欧のミッド・センチェリー期に於けるガラス作品に見られる繊細さとモダンな美しさとを、使い古されて、リサイクルされたワイン・ボトルやビールの空き瓶に備えさせる事に成功している。
リサイクルはこの作品に至って、単にものを再利用する事ではなく、過去に作られ既にそこにあるデザインの、もの本来の美しさや機能性を引き出す為の、創造的なプロセスという行為に置き換えられている。

このリサイクル・ガラス作品は現在中央アメリカのグアテマラで生産されており、利用されるガラス瓶なども現地で調達され、国政の状況からの就業率の低さや長引く貧困問題、自然災害の多いこの国を、労働と生産活動の両方の面からサポートをする事を目的に生産されているという。

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Midsummer Light...
Midsummer Light















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Like a Wednesday... Tord Boontje 3-1.
Wednesday


トード・ボーンチェにおいて特徴的な幻想的な鹿のモチーフが、深い森の中に入るような錯覚を引き起こし、ミステリアスな謎かけをそれを見るものに問い掛ける。

花のモチーフ柄を継続的に恣意に紡ぎ出す独自のソフトウエア・プログラムを開発し、Midsummer Lights 『真夏の光』と名付けられたランプシェードは耐久性のある紙のような素材、タイベック(紙および布の特性を併せ持った素材)に、真夏の曇りのない日差しのような色を、プリントによって施している。
それはボーンチェの伴侶であり、共にスタジオを運営するガラス作家である、Emma Woffendenとの間に生まれたエヴァリンちゃんとの微笑ましいエピソードにインスピレーションを受けて、まさに啓示を受けるようにして製作されたものだ。
彼は彼女の為に、共に森に暮らし、美しい木々の間に咲く花々を愛で、そこに潜むであろう動物たちをモチーフに、愛娘を喜ばせる為だけにキャンバスに絵を描いたという。

ボーンチェはその革新的なソフトウエア・プログラムの製作にあたって、有能なコンピューター・プログラマーであるアンドリュー・アレンソンの協力と、ロンドン芸術委員会とクラフト協議会から製作の為の補助を受けることが出来たそうである。花柄のモチーフを継続的に、しかもランダムに異なったパターンを生み出すそれは、音楽を作る為のシンセサイザーのリピートもしくはミニマル・ミュージックの手法・プロセスに似ている。
しかし彼にとってデジタル化のプロセスはあくまで製品のアウト・プットであり、彼のイメージの出生は彼の頭と手のなかにあり、それはクラフトとテクノロジーの融合、といえるものなのかもしれない。

彼は自身の作品を最終的にコンピューター・ソフトに委ねるとしても、それが原初のスタイルで彼の頭の中にイメージとして生まれる時、それを彼は自身の手と頭とを使って具現化する為のいかなる労力もいとわず、努力する事を惜しまない。 
彼の大量生産されたプロダクト『Wednesday Light』は、最初彼の自身のアトリエで個人的な発想のプロセスの中で生まれ、後にハビタ社から発売されるが、それは彼の個人的なプロジェクトである、動植物の連続的なモチーフを恣意に継続的に描き出すソフトウエア・プログラム、個人的に開発した生産の為のプロセスとそのシステムが、大量生産を目的とする生産プログラムに応用可能なだけのしっかりとした基礎を既に構築していた事の証である。

彼はその繊細な花の、バリーエーションに富んだ美しいイメージや、森の中に潜むように暮らす小動物たち、野うさぎやリス、バンビや野生の馬などの複雑な文様を、コンピューターで恣意的に作成するとしても、まず自らの手で、水彩絵の具を使って描くという。
洗練されて優雅なボーンチェの柄モチーフは、家庭的な18世紀のイギリスの伝統的な刺繍と、クラフト的な色合いの濃い田舎風な彫刻作品の装飾的な図柄からインスピレーションを受けたものでもある。
それはまた、親が子供に描いて読んで聴かせる御伽噺のように、愛娘に宛てた尽きることのないラブ・レターのように受けとめる事も可能だ。何故なら、彼の作品は愛娘エヴァリンちゃんが生まれた2000年を境に劇的に変化するのであるから。

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Rough-and-Ready
Rough-and-Ready













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Clouds and Migratory birds :
Clouds and Migratory birds



鹿の頭の形をした特徴的なティーポットHigh Tea Pot(2003)は、少なからずそれを初めて見る者に衝撃を与えるだろう。なぜならばここまであからさまに自然というものと対峙し、皮肉も何も無いかたちで自然をプロダクトに落としこんだ物は稀有であるのだから。このプロダクトに於いて人々は動植物の犠牲のもとで成り立っている事柄の多さを悟るだろう。
ボーン・チャイナ製のこのティー・ポットは鹿そのものの形をではなく、鹿の頭を象っているところが新しく斬新で、しかも骨格のみ、いわゆる鹿の頭蓋骨をPOTという洗練された日常の道具にまで高めていると言える。
POTの注ぎ口は天に向けられた野生の咆哮を想起させ、取っ手たる動物の後頭部はあくまで洗練された湾曲を保っている。POTを保温する目的で付属された河鼠の毛皮が巻かれた様は、まるで原初の用を満たす為だけに物に求められた道具本来のかたちを兼ね備え、生まれてきたものそのものの必然的な無駄のない美しさがある。

Wieki Somersの典型的なデザインのプロセスがよく表されているものの一つに、伝統的な船の形をしたバスタブ<Bathboat2005>がある。ヴァイキングのボートを思わせる木枠の付いた船の形をした、大人が脚を伸ばしてもすっぽり納まるだけの大きさを持った快適なバスタブであるそれは、伝統的な船を組み立てるクラフト的な手法に則ってひとつひとつ職人の手によって製作されたものだ。
そこに至ってクラフトは時代遅れの生産プロセスではなく、現代的な作家のアヴァンギャルドな作品作りに欠かせない技術であり、工業製品にはないデザインした者の思想と作り手の思考が昇華されたものであることを理解する事が出来る。

現代にまで続くオランダの国土の大半が人工的に創られた土地であるように、この国にあっては植物さえもが例外ではなく、人間の営みの中で利用され、都合に合うような形に加工され育てられてきた。彼女はそのようにオランダの大地にあって典型的なライムの木をモチーフにアルミニュウムで出来たオイル・ランプをデザインした。彼女のLindeランプはライムの木のかたちを象っていて同時に人間の手のかたちにも見える。       
彼女は日常の生活から得たインスピレーションを上手くプロダクトに反映する事のすべに長け、それはまるで昔からそこにあった生活の道具であるかのような錯覚を我々に与える。

彼女にとってプロダクトとは、人の手に渡り、使われることで本当のストーリーを紡ぎ始めると心から思っている。そして素晴らしいプロダクトは素晴らしい創作活動の過程に於ける結果であると。今回彼女について紹介した事柄は彼女についてをあらわすほんの極一部分に過ぎない。ぜひ Wieki Somers の世界観を体感して欲しい。そう、彼女は今も昔もそしておそらく未来も、素晴らしい創作の過程をクリエイトしていくだけの才能溢れる将来を約束されているのである。



http://www.wiekisomers.com/
今年東京で行われるWieki Somersのエキシビジョンが期待される。
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wieki somers a designer.
soap bubbles













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wieki somers a designer. 2-2
Bathboat



















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wieki somers a designer. 2-1
Wieki Somers


我々はヨンゲリウスやヨルゲン・ベイ、ワンダースらに代表される世代のデザイナー達の仕事によって素晴らしいオランダ・デザインの世界を身近に感じられようになってきているが、ドロ−グが提案する彼等以後のデザイナー達、『New Dutch Designers』にウィッキー・ソマーズも含まれている。
しかし、異なる才能と異なる経歴を持つ、デザイナーというものの存在の性質を考えてみても彼等を一つのくくりに収めることは困難であり、そもそもデザイナーとてそれを初めから求めてはいない。
ドローグは『New Dutch Designers』、その発端においてまずデザイナー自身の考えを尊重する。そして『New Dutch Designers』達もまず自らの思想を持ち、それを自らの創作のプロセスとプロダクトで表現することに於いて示し、それを提示することによってのみ、同時代にある事の意義を見つめ直し、再確認する為の手段として進んでアイデアを共有する事を提案する。

『New Dutch Designers』達に共通しているのは、ほぼ同時期にオランダのデザイン・アカデミー、アイントフォーヴェンを卒業し、自らのスタジオを起こした事である。デザイナー達が若くして独立して生計を立てて行く事が出来るのには、この国の芸術家助成金の制度の確立に拠る所が大きい。彼らはそのことによって純粋に芸術家でありながら生活をし、なおかつ自らの芸術の為の実験的活動を続ける事が出来るのである。

ソマーズは2000年アイントフォーヴェンを卒業後、独立、ロッテルダムに自らのスタジオを持つ。2001年特徴的な赤と白、白と青、白と黒に塗り分けられたマフィン・スツールを発表する。
3つのハンド・ソープはユニークである。草をはむ牛の形をした石鹸の中に透けて見えるのは陶器製のライオンであったり、外階段を持つ昔風のお屋敷の中にはモダンな意匠の建築物が、伝統的な服装を着た農夫の中には青いスーツを着たビジネスマンが透けて見える。それは現実の中に透けて見える伝統、伝統の上にこそ成り立つ現在、現実と共にある伝統の重要性を示していて、端的にビジネスマンは現代オランダにおける、経済的成長に言及している。

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