FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

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デザイン/アートの分岐点
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突然のニューヨークのデザインストア兼ギャラリー 「moss」 閉店のニュース(写真はmossの近況を伝える海外のウェブニュースよりスクリーンショット)。ウェブログ、FORM_Story of designでは2006年頃からデザイン/アートについて論考してきたが、その話題を提供してくれたのは、美術を扱う正統的なミュージアムやギャラリーよりも、ショップやインディーなデザインレーベルやギャラリー、デザイナーのアトリエから発信されるデザインであった。

なかでも、オランダのVIVID GALLERY、パリのギャラリークレオと並び僕が注目していたのがニューヨークのデザインショップmossであった。
mossはマレー・モス氏とフランクリン・ゲッチェル氏の2人によって1994年にニューヨーク・SOHOにオープン。2007年には同じアメリカ国内西海岸ロスアンゼルスにも進出、この数年デザイン/アートフェアにも常連のように出展していたことも記憶に新しい。

ヘラ・ヨンゲリウスやマーティン・バース、ステュディオ・ジョブ、クラウディ・ヨンゲストラらのいわゆるドローグやアイントホォーフェンに端を発するオランダの先鋭的なデザイナー、カンパーナ兄弟、トード・ボーンチェ、大御所ではイタリアのガエタノ・ペシェらも、mossが2000年代に積極的に紹介し、その後世界的に注目を集めるデザイン界のスターたちだ。

アーティストや美術家ではなく、デザイナーとよばれる彼らが当時mossなどのデザイン系ギャラリーで発表していたもののほとんどは、ユニークピースと呼ばれる一点ものが中心であった。それは大量生産には向かない手の込んだ作りのものであると同時に、高価な素材を贅沢に使ったり、道具としての機能を持たないもの、そもそもマスマーケットを対象にした大量生産・大量消費を前提としたものでも、されるようなものでもなかった。
だがそれらは、その特異なカタチゆえ、一見本来デザインが拠り所とする問題解決や、機能とはほぼ無縁なものであるからといって、無用なものであるという判子を押すこともできないものでもあった。

名作家具を燃やして黒焦げにしたものや、オフィスチェアの脚をもった動植物のようにもみえる抽象的なオブジェクト。大理石で出来た工芸品のようなスツールやブックシェルフ。それらは座るための椅子や、普段使いするできる道具、買いやすい値段など、従来の工業デザインがもつ意味からは大きくかけ離れたものであったことは確かだろう。
それが社会や産業に対し、何かしらの意味を持ち得たとするならば、アーティストにくらべ、普段社会に身近なところで仕事をすると思われていたデザイナーたちが、それらのデザインを通じ、現状の社会に対して異議を表明したことだろう。
ある仮説をたてるなら、それらアートのようなデザインは、現状の社会を批判的にとらえたもののあらわれであり、それを乗り越えるためのデザインによる応答、そういった意味での問題解決のためのデザインであったと。

ともあれアート市場という、小さいが巨大なマーケットをピンポイントにターゲットにしたそのスタンスは、それまでのデザインにはあまりみられなかったアプローチだっただけに、ことさら新鮮だった。
同時に、日常をより良くするという機能の面が重要視された、これまでのデザインとはかけ離れたアプローチにより生まれてくるそれらのデザインは、特定のマーケットやメディアに驚きとともに賞賛で迎えられたが、その特異なあり方ゆえ批判の対象にもなったこともあったように思う。
そんなアートとしてのデザインのマーケット/フェアであるデザインマイアミがはじめて開催された2005年頃には、デザインは現代アートと同様にビッグマネーを生み出すものとしてアート市場において認識され、デザイン=アート市場はにわかに活気づいたようにみえた。

mossもデザイン=アートの震源地であるオランダのミュージアムと共同で、デザイナーによるアートピースを手がけるなど、デザイン/アート市場において、その影響力はデザインや、デザイナーたちのパトロンとして、オランダやその他の国々とは桁違いのグローバルなマーケットを持つアメリカという国にあって、その立ち位置は際立っていた。mossの存在は、わが日本もふくめ、2000年後半の特定のデザインシーンを大いに活気づけたことは間違いがない。

ニューヨークのmossのショップは2月17日をもって閉店との情報
だが、海外のニュースサイトによると、今後はもう少し小さなスケールでのショップとしての活動再開も予定しているというから、mossの新たな展開にも期待したい。
世界同時経済危機をひきおこしたリーマンショックならぬmossショックにより、デザインとアートの蜜月は終了したとみるむきもあるようだが、人間の生活の営みがあるかぎり当然ながら「デザイン」は存在するし、社会のあり方をある側面において強度をもって示すデザインそのものを刺激するデザイン/アートというジャンルも存在し続けるだろう。
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