FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

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本郷館
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文京区本郷の歴史ある下宿屋「本郷館」。
このエリアにはおもむきのある木造建築による昔ながら民宿や、全​国からの修学旅行生を迎え入れる旅館がいくつも建ち並ぶエリア。
1905年建造の木造3階建て建築は、今年で建造106年をむか​えた。明治の時代から大正の関東大震災、東京大空襲を生き延び、​何度も取り壊しの憂き目にあいながら今に至る。

東京大学や東京藝術大学も近く、この本郷館にも歴代数多くの学生​たちが居をかまえたという。なかには著名人も若いころ多く宿をと​り、歴史ある佇まいは文学や映画の舞台にもなった。なかでも「稲​妻」、「放浪記」など、戦前の女性の生き様を自身の生き方になぞ​らえ鮮烈に描いた小説家林芙美子が、若い頃をこの下宿宿ですごし​たことは良く知られている。

僕も学生のころからしばしば本郷館のあるこのエリアには自転車で​訪れ、坂道の途中に建つこの木造建築を真下から見上げたものだ。​坂道をくだり、本郷館を裏手から眺めると、二方を傾斜地に囲まれ​、この建物が東京大学などを擁する本郷の高台の上にたつことがわ​かる。
先ごろ、老朽化を理由にいよいよ取り壊しが決定したとの報を受け​た。先日訪れたときは、居室の木製の雨戸も閉ざされ、静かにその​最期を待っているようだった。

大きなビルなどがほとんどない小さなスケールの建物が多いこのエ​リアで、本郷館の3階建て延べ400坪の巨大木造建築は、都市的​な圧倒的スケールを持ちながら、木造建築独特の温かみを兼ね備え​た町のランドマークともいえる名建築であった。
写真は、本郷館の有名な正面からの景観ではなく、言問通りにつながる坂道の眺め。坂道の途中にたつ巨大木造建築の迫力が伝わるだろうか。
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