FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

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白いシャツ


白いシャツを羽織ることが僕の日常に近しくなってどれくらい経つだろうか。
先日広島で出会ったアパレルショップ「SARDINE」の白シャツは、僕が大好きなDIGAWELのシャツと同じくらい着心地がすこぶる良い。シャツに袖を通すことは、僕にとって日常でもあり、非日常への扉を開くことでもある。
SARDINEの白いシャツは僕のワードローブにある他のシャツと比べて、一見どこも変わったところはないのだが、その少しタイトなシルエットのせいか、ちょっとだけいつもより背筋が伸びるような感覚をおこさせるのはなぜか。
ふと学生時代、制服の白いシャツに抵抗感をもっていたことを思い出すが、いま僕が白いシャツを羽織る感覚にそれはまったくない。

ショップSARDINEのオーナー夫妻は広島出身。若い頃は東京のアパレルメーカーに勤務し、一昨年広島に帰郷しSARDINEを開いたと聞いた。
オリジナルウェアに付けられた皺感がなんともこなれている感じの少し大きめの下げ札には「MADE BY SARDINE & PEACE HIROSHIMA」の文字が見える。
よくよく古い雑居ビルの2階にあるお店の中を見渡すと、PEACEの文字が書かれたアイテムをいくつか目にすることが出来る。

広島の名前は65年前の忌まわしい惨劇の日から、平和という文字から切り離して語ることは不可能になってしまった。
だけど、僕らがいま平和を語るとき、そこに何か色褪せたものを感じるのはなぜだろうか?
平和とは本来的には誰もにとって普遍的な希求に近いそんな願いのことだろう。

僕らが今、リアリティをもって平和と語れるようになるために必要なものとは何だろうか?
SARDINEは洋服を通じてPEACEを訴えているようにみえる。それは広島で洋服をデザインするデザイナーという職能をもった人間のまさにリアリティをともなった、その言葉との向き合い方であり、問いかけだろう。
物質的にはかつてないくらいに豊かになりながら、誰もが物質的である以上の豊かさを求めるという、そんな不可思議な時代ともいえる現代。
誰もが誰かにとって、そして自分に対して語りうる、本来的な言葉を欲している。SARDINEはそれを洋服でもって示すことをしているようにみえる。

はじめてお店を訪ねたとき、お店の名前の由来が分からず、サルディーンとかサルディーヌと言っていた僕にも、オーナー夫妻は自分たちが作る洋服について優しくお話をしてくださった。
その後の会話のなかでお店の名前の由来が「小イワシ」であることを知り、郷土愛に根差したこのショップ名の由来を知った。小イワシは広島ではカタクチイワシと呼ばれ、広く親しまれてきた。市内には小イワシを売り歩く行商の人がいるほど、広島では親しまれている魚だという。恥ずかしながらそのことを僕は全く知らなかった。

SARDINE=サーディーン。小イワシのオイル漬け、サーディーンだ。何気ない対話のなかからそんなお店の名前の由来を聞くと、なんだかそれだけでこのお店に愛着が湧くように思う。僕は東京にあってこのシャツに袖を通すたびに、広島について、そして平和について、もう少しだけ考えるということをやってみようと思っている。


SARDINE White fabric shirts, [BRENNET SHIRT]
FABRIC- BUNDESREPUBLIK DEUTSCHILAND
100% Cotton

6-2-2F Fukuromachi Nakaku Hiroshima

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