FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

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建築のスキル  デザインの実践 PACO展


この地球上どこにでも設置が可能な小住宅が、このスモール・セカンドハウスPACOだ。白い3メートルのこのキューブには、3メートルというサイズが活かされた機能と、この形でなければならなかった意味が十分に具現化されている。
まず収容人員を1.5人に設定したという一人の隠れ家としてはコンパクトさが心地よい室内のサイズ。セカンドハウスであることによる、非日常感を味わうこともできる白で統一された内装。とくに中村塗装工業によるエポキシを流し込んだという白の陰影がある透明度の高い床は、それじたいがファインアートのようで、白一色のこの建物の外観と内観との境目のない、まるでギャラリーのホワイトキューブのようでもある。 白く塗りこめられたエポキシによる塗装は中村塗装工業のなかむらしゅうへいさんとスキーマの長坂常さんによる、凹凸をフラットにしていく「フラットプロジェクト」の延長上にある作品だ。

スイッチパネルに触れずに、手をかざすだけで室内のLEDダウンライトが点滅する仕掛けや、昨年のデザインタイドメイン会場の布の建築も記憶にあたらしいファッションデザイナーの森美穂子さんのテキスタイルによる、室内で傘を差すようにバラソルで天井から吊り下げられたオーガンジーのシャワーカーテンをもったシースルーのシャワー室、新素材三次元立体編み物によるハンモックなど、住居でありながら遊び心満載なのは、この住宅としてはいささかちいさく、はなれとしては大きいこのセカンドハウスならではの新しいスケールなのだろう。 ちなみにクオリティの高いインテリアデザインは、今回のプロジェクトにコラボレーターとして名を連ねているワールドワイドなファニチャーレーベルE&Yが手がけている。

このPACOには名称の由来にもなったと思われるユニークな仕掛けがある。それは箱の蓋を開けるように、屋根がパコッと口をあけるような、まるでおもちゃのような仕掛けだ。パコッ、パカッと開閉する屋根は、油圧シリンダーを動力とすることでかなりの重量を支えることができ、天井に吊るされたハンモックに人が寝そべったまま開閉ができるという。屋根全体が開閉するといっても、見た目には車のサンルーフが開くように軽やかにしなやかだ。

「paco展スモール・セカンドハウス」は文字通り、室内にしつらえられたスモールハウスを現代アートのように展示するちいさな展示会、あるいはこれからセカンドハウスを持ちたい、と考えている人にむけたちいさな住宅展示場でもある。 このユニークな小住宅のデザインを手がけたのはこの空間のあるじでもある長坂常+スキーマ建築計画。事業主およひ施工は株式会社ルーヴィス。
展示会が開催されているスペースhappaは、今回のPACOのデザイナーでもあるスキーマ建築計画、エポキシによる塗装を手がけた中村塗装工業、ギャラリー青山|目黒がシェアするクリエイティヴスペースのことをいう。駒沢通りに面したガラスとサッシュによる外観が他とは一線を画し、いつもなにかが起こり行われているような刺激的な空間である。

掘りこたつの床を利用したような寝室兼床下収納スペース、床下に隠すこともも可能なトイレ、ちいさいながらも美しいキッチンも備え付けられ、全体的にタイトながら、起伏の感じられる楽しい居住空間。 生活するための給排水と電気は既存のインフラを使用、将来的にはソーラーパネルの設置や、雨水などの利用により、無人島にも置けるようなインフラフリーのPACOを考えているという。

正直、このスモール・セカンドハウスを見て、住宅デザインはプロダクトデザインと同様に今や消費の対象であり、交換可能性を秘めたフレキシブルなものであることを実感した。それは否定的な意味ではなく、住宅デザインの新しい可能性を秘めたものとして肯定的にそう思う。なぜなら住宅デザインと同様にディテールのよく練られたデザインや、プロダクトのように遊びとゆとりを感じさせるデザインの可能性は、このスケールの住宅ならではのスキルだろう。
ちいさなスイッチひとつで大きなジョークのようにゆっくり開閉する屋根を見たとき、その家の裂け目から見えたものは、建築やプロダクトデザインの未来ではなく、まぎれもなく私たちが暮らすこの地球の未来であり、窓の裂け目の先に遠くまで見える、自立するPACOの連なる風景だった。


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