FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

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二俣公一さんの4FB
4FB

21世紀の今、デザインに求められているものは、それが置かれる空間全体を見据えた配慮の感じられるデザインだろう。それはそれが置かれる環境全体と言い換えてもいいのだが、その空気を乱さず、よごさずに改善しうるもの。
デザインが行うべき現代の問題解決の対象は、人びとの生活一般というよりも、環境全体に良い影響を及ぼすこと、そのためのプロダクトデザインだろう。それは経済優先ではなく「理想」に近い理念のはずだ。

いよいよ、日本のファニチャーメーカーE&Yより二俣公一さんのコートハンガー、『4FB』が発売になる。空間デザイナーである二俣さんとは、昨年の11月デザインタイドの会場でお会いすることができた。4FBを前にその創作の過程を伺ったこともあり、このプロダクトには個人的にもとても思い入れがある。

二俣さんは空間デザイナーとしての仕事のほかにも、1998年に発表されたキューブ型のコンセントタップなどのプロダクトデザインも手がけており、空間的な広がりが感じられるそのデザインにはかねてより定評がある。

まずこのプロダクトが持つミニマムなたたずまいには、禅の思想にも通じるような静けさがある。それは華やかさとは対極的な「わび」の感覚に近いものでもある。

4FBはアルミという素材を通して感じられる、硬質な冷たさとは異なる温かさを感じさせる。また無駄のないフォルムはコートを掛ける、という用途を離れても十分に機能しており、その機能のあり方は優れたプロダクトが共通して持つ、それに触れてみたい衝動をおこさせる。

アルミの支柱に施されたアルマイトの塗装は、この鉱物でできた素材の冷たさを消失させることに一役担っている。
まるで木材のような温かみを備えた、まったく新しいアルミの質感は、この4FBのひとつの特徴でもある。それはこの素材感を生かすデザインを生み出した、二俣さんのデザイナーとしての考え抜くことによる才能によるものだ。
4本のアルミのバーが卍型に組まれ、それが上と下で、天と地に向かって開かれるさまは、それまで留められていたものの完全な力の放出をあらわしているという。

空間的広がりとは、そのプロダクト自体がその存在だけで完結するのではなく、それ自体が積極的に空間との関わりを持ちながら、新たな空間のあり方を示すようなもののことだ。
未来のプロダクトデザインはミニマムに環境全体のあり方を見据えた、自然のあり方に近いものになるだろう。でなければそれが生き残る道はどこにもない。
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