FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

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... Hans J.Wegner....
職人にあこがれて

一枚の古ぼけた写真が残されている。ところどころ破れた跡があり陰画紙の傷の残る写真。のちの世界的な家具デザイナー、ハンス・ヨルゲンセン・ウェグナー、10代半ばの木工職人修行時代の写真である。
1914年、デンマークの田舎町の靴職人の息子として生まれたウェグナー。14歳で地元にある家具工房で木工の修行を積む。17歳でマイスターの資格を得たとき、のちの職人肌の天才的な家具デザイナーは生まれた。
ウェグナーの椅子作りはまさに家具職人のそれである。まずアイデアをもとにスケッチを描く。その後実際の椅子の五分の一ほどの図面を引き、実物と同様のミニチュアを作る。それからやっと実寸の図面に基づきプロトタイプを自らの工房で作成するのだ。また当初のアイデアを具現化するため、製品を量産するメーカーの職人との自由な意見交換がなされる。そこでデザインが変化することもあったという。ウェグナーの作る家具はウェグナーと彼が信頼する職人たちとの共同作業であるといえる。
人が生活のなかで使用する道具だからこそ、物作りにはデザイナーの自己主張よりまず使い手が優勢する。デンマークの家具に対する厳しい品質管理は無駄な製品が流通することを防いでいるのだ。

人びとの心に残るデザイン

造形的に見てウェグナーの家具には無駄なところが見当たらない。それどころかそれぞれの部位がほかの部材と必然的に連関し、時に人の卓越した技術力によって各部位が支えあっている。それがまた見た目にも美しさに至っている。リ・デザインの理念は時に過去を尊重することであるが、別の角度から見れば否定でもある。だからこそウェグナーの家具にはそれが生み出された時代に対峙する現代的なデザイナーの先鋭的な理念も見え隠れする。装飾はないものの職人の手技が生み出す技術力の高さは、装飾以上の装飾とともに誰にでも受け入れられる繊細なディテールを家具に与えている。
またウェグナーの家具は木の特質を活かした健全なものだ。それは木についての綿密な研究に基づいている。木の特質を知ることとは椅子作りに対するウェグナーの真摯な姿勢を物語っている。

家具を通して人と木とのつながり、しいては自然とのつながりを示したハンスウェグナー。それはとりもなおさず一人の偉大なクラフツマンが見た夢の物語に他ならない。


そして半世紀あまり時を経て自作の椅子に腰かけるウェグナーの写真。ここには時を越え少年の頃と同じ夢を描いた人間の優しい笑顔があった。
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