FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

ZAMPA CHAIR/JASPER MORRISON/Mattiazzi

 

ZAMPA CHAIR ザンパチェアはジャスパー・モリソンがイタリアの家具メーカー「Mattiazziマティアツィ」のためにデザインした同名のスツールから派生したもの。自由な曲線で描かれた2本の前脚は座面にダイレクトに接続され、同じく湾曲した2本の後ろ脚は背もたれの頂上まで延び、木ダボで背板とストンと接続されている。

その後ろ脚は座面から申し訳程度にのびた接合部により連結している。控えめなこの最小限の接点だけでこの椅子全体のバランスを保っているところが、この椅子の最大の見どころだと思う。

それに比べると全体のバランス的には少し大きめな両端が張り出した笠木(背もたれ)は、ゆったりと背中を包みこむような形。これはジャスパーのほかのいくつかの椅子のアイコニックな笠木のデザインとの相似形が見られる。

そうやって見ると座面の下からのぞくフリーハンドですっと描いたような4本の脚のうち、後脚2本はジャスパーの初期の名作「Ply-Chaiir」や、maruniの名作「Light wood chair」の後ろ脚を彷彿とさせる。あるいはトーネットの椅子たちの。また、フラットな円形の座面ももつこの椅子は座面裏のシンプルだが複雑な二重構成により、表向き見た目はフラットな板座でありながら、想像以上にやわらかな座り心地を実現している。

そうして100年以上前に生まれたベントウッドチェアやアーコールチェアにも共通する、小ぶりな椅子でありながら、体に触れ、座り心地を決める背もたれと座面が比較的ゆったりと取られているからカジュアル使いに快適さをもたらしてくれる。

Mattiazziはネヴィオ&ファビーノ・マティアッツィにより北イタリアの街に1979年に創業した木工家具工房。近年ではジャスパー・モリソンの他にサム・ヘクトやロナン&エルワン・ブルレック、コンスタンティン・グルチッチなどのデザイナーとタッグを組み、トップクオリティの木製家具でスモールカンパニーでありながら世界的な評価を獲得している。

この椅子の原型となるスツールはジャスパーが田舎町でみた4本の湾曲した脚に丸い座面が乗っただけのシンプルな家具、ジャスパーがいうところの「カントリースツール」からインスピレーションを得たという。

ただ、ジャスパーはMattiazziからザンパのファミリーとしてこの椅子のデザインを依頼されるまで、このファミリーに椅子を加えることを想定していなかったという。

個人的にはジャスパーがこの椅子の原型を「カントリー」という言葉で表現したことが気にかかる。カントリーチェアやカントリー家具とは、巷では木でできた素朴な家具の総称。ミニマルなザンパチェアがどこか素朴で牧歌的な印象を感じさせるとしたら、それはこの出自に依拠するのかもしれない(ちなみにzampaとはイタリア語で動物の「足」を意味するのだとか)。

そしてそこにはもちろん技術とデザインのマッチングが思考されていることは言うまでもない。そして単純にミニマルでクラシカルなデザインをジャスパーがするはずもない。

ザンパチェアはのちにスーパーノーマルとして宣言するようにジャスパーが工業的でシステマティックな資質とともに、「Ribbed Table」や「One-Legged Table」(1988)にあらわれているようにそのフォルムにはデビュー当時から備えていたシュールレアリストたちが持っていたような、ヨーロッパ的なもののアヴァンギャルド精神がふつふつとにじみ出ている椅子だと思う。

もしそうするのであれば、カントリー家具に着想を得る必要がそもそもない。そのアヴァンギャルド精神がジャスパーのプロダクトに惹きつけられる重要な要素であることは疑いようがない。

 

JASPER | permalink | comments(0) | -
JASPER
JASPER | permalink | comments(0) | -