FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

KIGENZEN
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そもそもフェルトとは、織物ではなく、羊毛の縮絨(しゅくじゅう)する性質を利用して水に濡らして圧縮、または摩擦によって組織を緻密にしたものである。それは遊牧の民が寒さをしのぐ為に靴底に毛足の長い羊の毛を敷き詰めたものが、摩擦によって羊毛同士が絡まり、シート状に硬く圧着した偶然の出来事がその起源だと言われている。

現在、青山のギャラリーNOW IDeAで開催中のフェルトユニット「KIGENZEN」の展示は、これら原初的な織物以前のテキスタイルであるフェルトを使用した作品を展示、その場で制作するというインスタレーションとなっている。
KIGENZENとは多摩美術大学時代の同級生であるテキスタイルアーティストのかとうゆうこと、くまじゃわによるアートユニット。かとうゆうこはmina perhonenでアーティスティックなフェルトのアクセサリーを手がけ、その作品は手のひらのなかで自由にイメージをかたちにすることのできるフェルトならではの手工芸的なアプローチで制作している。くまじゃわはフェルトがもつプリミティヴで伝統的な技法にこだわりながら、マテリアルに羊毛以外に髪の毛を混在させるなど、静と動の相反するものを自身の作品に織り交ぜ、色と形の鮮やかな自由なフォルムをもった作品を制作する。

ユニークなユニット名は、この原初的なテキスタイルであるフェルトが、紀元前6000年までさかのぼり人々によって親しまれ、さまざまなかたちで生活の中で使用されてきたその歴史的背景に由来する。
先にも引用したオランダのクラウディ・ヨンゲストラもそうだが、KIGENZENの二人によるフェルト作品は、既存のフェルト製品がもつぼんやりとしたイメージとは異なり、軽やかでインスピレーションにあふれ、しかも、それぞれこの二人のアーティストならではの個性があふれた作品になっているのが特徴だ。かとうゆうこのフェルトならではのあたたかみがあるコケティッシュな作品、くまじゃわの繊細でときにダイナミックな作品という、ユニットでありながらまったく異なる作品世界がその魅力となっている。

エキシビション会期中には実際にフェルトをつかったワークショップも開催し、KIGENZENの二人と一緒に自分だけの作品を制作することもできるという。ワークショップでは先日のD♥Yでも披露されたメッセージカードを内包した「タイムカプセル」と、今回の展示で初となる「ニードルフェルトで世界遺産」の二つを用意。それぞれ参加者がテーマにそって自由にフェルトで一点モノの作品を制作する。
最後にもう一度アーカイブからテキストを引用して締めくくりたい。

織物以前のもっとも素朴なテキスタイルであるフェルトは、もっとも自然に近い不織布であり、織物やニットの技術が発達して様々なバリエーションが生み出されていく現代にあって、一人取り残されるようにして孤立していて素朴で、原理的に確立された伝統的な素材でもある。
その生産の為のプロセスがいささかでも人の手を煩わせることなく、速やかに儀式的に執り行われることを前提とせず示したとしても、人が自然の営みと恵みを借りて、身体を働かせて作り出すものに畏敬の念を払う事を失わず、その上で手工芸の素晴らしさに自覚的にいる事を忘れない。

人の歴史の紀元前にまでさかのぼるフェルトというマテリアルには、いにしえの人々が人知れず築いてきた神秘的な魅力がひそんでいるのだ。

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KIGENZEN展
開催中〜2011.3.6(Sun)
ワークショップスケジュール
2011.3.3(thu)17:00〜世界遺産
3.4(Fri)14:00〜タイムカプセル
3.5(Sat)14:00〜タイムカプセル  17:00〜世界遺産
3.6(Sun)14:00〜タイムカプセル  17:00〜世界遺産
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Hiroshima 2020 Design Charrette
Hiroshima 2020 Design Charretteを、2010年6月6日(日曜日)広島市で開催します。

Hiroshima 2020 Design Charrette は2020年のオリンピックを通じ、建築とデザインによる未来の広島の姿を提示すると同時に、自分たちが2020年に誰とどこで何をどのようにしていたいかをイメージすること、そして2020年の建築とデザインのあり方の一断面を示すものになると思います。

ぜひ、みなさんもご参加ください。

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