プランク社はコンスタンティン・グルチッチのプロダクトとしては他にもミウラという名前を持ったバースツールとテーブルを発表している。2006年にはそのミウラスツールにまつわるエキシヴィションをニューヨークの街中で開催している。ミウラはランボールギーニの好きのグルチッチの趣味を反映している作品とも言われ、シャープな骨格を与えられた未来的な形をしたスツールである。
今年BASF社と共同開発されたミヤト・チェアは、最近のグルチッチのプロダクトデザインの趣味を反映させてか、素材の特性を生かしたディテールが際立っている。
まずは素材ありきの今回のBSFA社とのプロダクトという今回の試みにしても、与えられたマテリアルの特性をとことん研究しつくした痕跡がみられる。アルミニュウムという素材を削りだし独特の作品を作り上げたオランダの若手デザイナー、ヨーリス・ラールマンや、大理石で作ったジャスパー・モリソンなど、現代のデザイナーと素材は極めて密接な関係にある。
しかもグルチッチは椅子を素材そのものには還元せずに、自らのディテールを生かした物作りを達成している現代において稀有なデザイナーの一人である。
現在において彼のプロダクトが一部の人間に熱狂的に支持されあいされていながら、プロダクトとしての生命を真っ当せずに、不当に生産が終了されたりしている現実はもしかしたらそんなところに由来しているのかもしれない。
カンチレバーの椅子はその構造上今までの椅子にはなかった座り心地の良さと、座ることの楽しさを獲得した。しかし座り心地の良さとは素材に過度のしなりという付加を与え、素材に特別の強度を要する。有名なパントンチェアはその造形の完全なるイメージとの一致を見るまでの長いあいだ、その芸術的な造形を具現化するためにマテリアルの強度という、科学技術の発達を待たなければならなかった。
カンチレバーの様式を取り入れることによって得られる造形的な華やかさは、今までの歴史の中でも見られなかった稀有な美しさだ。だからこそミースはLess is moreという言葉の中に究極的な美しさを見出そうとしたのかもしれない。
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