名古屋で出会った椎野さんのガラスはベネチアとも、北欧とも違う、愛知のガラス、というべき土地のにおいを感じるものだった。
愛知は焼物の原料となる良質な粘土や、ガラスつくりの原料となる珪砂が採取される土地柄。古くは瀬戸という民窯をもつことでも知られている。以前にご紹介したガラス工房、スタジオプレパの平さんも愛知県の出身。
今回椎野さんの作品を見たお店は、名古屋の花と現代アートを扱う、本山のフローリスト・ギャラリーN。おとずれた当日オープンしたばかりのフラワーショップは単に花を飾るという行為ではなく、フローリストが提案する、花とともに過ごす日常を豊かに彩る花の、そして植物との出会いを通して人のつながりを感じることのできる感性の高いショップだ。
椎野さんのガラス作品は日常の道具としてのガラスとはことなり、人が日常めでるための作り手の感性が反映されたアート性の高いもの。それはそれが置かれる空間をガラスという熱をともなった天然のオブジェにこめられた作り手のたましいのあり方を感じる個性の強いものだった。
しかし、ガラスというそのままでは自然に戻すことのできない環境に対する配慮を必要とするマテリアルと真摯に向き合う椎野さんのもつ個性とそのひととなりは、わたしにとってアートをたったひとつの個性に還元することのない、広い心をもったガラスの作り手という考えにむすびついていた。