FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

食べることいきること  Marije Vogelzang


先日の夜、アクシスギャラリーで開催中のMarije Vogelzangのeating+design展のレセプションへ行った。以前にもこのblogで書いたことがあるが、マライエは食をテーマにデザイン活動をするオランダの女性デザイナー。彼女に興味をもったきっかけは、ドローグ、アイントフォーフェン、ヘラ・ヨンゲリウスという3つのキーワード。ドローグは彼女のクライアントのひとつであり、アイントフォーフェンはマライエが通っていたオランダのデザインアカデミー、ヘラ・ヨンゲリウスは彼女の師匠である。

会場についてまず目を引いたのは、ギャラリー空間を対角線に仕切る,何やら白い囲いだ。それはマライエを知る者なら察しがつくであろう、「シェアリングディナー」と題されたインスタレーション空間だ。
ご存知でない人のために念のため説明すると、ベンチが置いてあるのが見える細長いダイニングテーブルには、天井から吊るされた白いテーブルクロスがかかっている。
その白い布にはベンチに座ると、ちょうど顔と両手を差し込むことが出来る高さにスリット状の切り込みが入れられている。それに顔と両手を入れると目のまえのテーブルの上にディナーセットがあるという仕掛けだ。
だから、その白い布のなかに入ると周囲の一切の関係から切り離されることになる。目に見えるのは白い布のなかでともに食事をする、同じ状況のなかで食事を楽しむ人だけだ。実際に、友人2人とこのなかに入ってフードのインスタレーションを体験中に、すぐ後ろでマライエのレクチャーが始まったのだが、このなかにいると外の状況がまったくわからない。ここに入ることによって周囲の環境や出来事とある程度関係を断ちながら、純粋に食事と、ゲストとの会話を楽しめるという仕組みだ。
資料を読むと、実際にこのインスタレーションはそのような、周囲と関係を断ちながらも、ある程度外部とのゆるやかな関係を保持しつつ、食事をするということがテーマになっていると書いてあった。

マライエがロッテルダムの歴史博物館でおこなった、ある食にまつわる実験のエピソードを読んだ。それは実際に第二次世界大戦に参戦した兵士を対象にした、当時のメニューの再現というものだ。それを食べた戦争の当事者は、用意された料理を食べることで、当時の感情的な日々が蘇って来たという。
僕個人の体験からいえば、揚げパンやクリームシチューを食べると、義務教育時代食べた給食を思い出すように、そのように食べるということや味覚というものは、さまざまな記憶を含んでいる。「すいとん」を食べると、戦後の貧しい時代を思い出すなど、「食」は食材の歴史と、国民の固有の記憶や実際の歴史、そんなそれを食べる人の歴程をやすやすと連想させる力をもっている。
マライエがデザインするアートのインスタレーションのような、実際の食に不可欠なおいしそうとか、そそる感じから離れた、かわいいという即物的な印象は、実はそんな「食べるという行為」がはらむ人間の実存に結びついているのかもしれない。

この展示を見て、そんな歴史的背景を知ることはさておき、食はおいしく食べれなければ本当の意味での食ではないのではないか?なんて、そんな疑問をもつこともあるかもしれない。でも、食はつねに楽しみを提供するばかりではなく、さまざまな局面につきものであることをマライエは僕に思い出させてくれた。
肥満児が食べるダイエットメニューや、糖尿病をもつ人の食べ物はあまり美味しくないかもしれないし、プライベートのつらい状況下での一人寂しく食べる食事もある。人との別れの場にも食事はあるし、そんな思い出をたちきるための食事もあるだろう。けれどマライエが本展で見せてくれた「肥満児のためのコンセプト」という食のプロジェクトでは、「エネルギー」「友情」「信頼」など、食材を前向きなイメージをもつカラフルな明るい色に結びつけていて好感をもつことができた。それが実際に食欲をそそるレベルにあるのかどうかはさておき、楽しく食べることができ、かつバランスの良いダイエットメニューとしてうまく提案されていると僕は思った(実際にD'ont Touchとなっているにも関わらず,僕はあやまって手を出しそうになった)。

僕が勘違いしていたマライエのフードデザイナーという肩書きも、今回の展示をみて「イーティングデザイナー」として再認識することができた。
食べることは人間にとって日々の切実な問題だ。総中流化が達成され一見豊かな現代社会を実現した日本では、食べることに興味を持てない、そんな子供がいるなんて話を聞いたことがある。
そんな話を聞くと、人はそもそもなんのために、どんな目的を持って食べるのか?そんなことにも敏感になってくる。そんな現代社会において楽しく食べるためにデザインをしつづけるマライエは、食のアプローチから日常の問題解決を模索する、希有なデザイナーであることには間違いがない。


eating+design: デザインにできること2展 by Marije Vogelzang
2008年10月24日〜11月9日 AXIS GALLERY



笑ってます(笑)
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...for afterhours...
after

...afterhours|weblog
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...Marti guixe..candy restaurant...
martie

11日まで丸ビル1階cafe Easeで開催中のマルティ・ギシェのフード・インスタレーション「キャンディ・レストラン」。
マルティ・ギシェは食についてのインスタレーションや書籍で知られるスペインのデザイナーだ。しかし本人はいたって元デザイナー=ex designerとしての肩書きを名乗る、異色のデザイナーでもある。
昨年東雲のトリコで開催されたフード・インスタレーション「スパムト」はフランスパンとオリーブオイル、そしてトマトといった食材を使って、ギシェ本人がスタッフや友人たちと軽食を作るといった一種のハプニングのようなパフォーマンスを見せてくれた。

久し振りのギシェのパフォーマンスは今年はなんの予告もなく始まった。今回はギセシェ本人が食事を提供するわけではななそうだが、全てのヴィジュアルや食にまつわるコンセプトを手掛けているようだ。
新丸ビルオープン、そして有楽町にはペニンシュラホテルがグランド・オープンと界隈は昨今話題に事欠くことがない。
今回のマルティ・ギシェのインスタレーションはこの秋ニューオープンする有楽町マルイと丸の内商店会の主催で行われている。

スターターからメインディッシュの全てがキャンディで供されるというから、味ばかりでなく見た目にも鮮やか、鮮烈な印象を残すものになりそうだ。
というのも実際にカフェまで足を運んでみたのだが、肝心の食にはあずかることが出来なかったのだ。なぜならとても一人で入場するような雰囲気ではなかったし、男一人でキャンディというのもどうにも気が引けたからだ。ぜひ今度は連れと一緒に訪れてみたいものだ。

CANDY RESTAURANT

presented by Yurakucho Marui and Marunouchi
Cafe Ease, 1F Marunouchi Building


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...I need Sweets...
I need Sweets

at collex LIVING. Produced by Still Life
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...food design...episode 1.
mbb

食をデザインとしてクリエートしていくための重要な要素とは。
その答えを示唆するような言葉が先日届いた。送り主は世界をたった一人で旅しているひとりの女性だ。
人々の暮らしを知ること、そのための『最も有効な手段は「食文化」を知ることだと思う。その土地で何が採れ、何を栽培し、どのようにして食すか』
またそれを知るためには『言葉そのものはあまり重要ではない』
確かに彼女は世界を歩くため、人と交わるときに有効と思われる言語の全てを習得しているわけではないだろう。だからこそ見えてきた人と本当に関わるということの難しさとその意義深さ。
『彼らの目の前をただ「通過していく」ことは』たやすい。
そこで感じた食文化を知ることの重要性は、物質的に決して豊かとはいえない南米の国々を経巡っている彼女の言葉だけに実感がこもっていて切実に響いてくる。
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...food they dream...Marije Vogelzang...3-2
ma

彼女が提案するケータリングのシステムは合理的で美しく一見して無駄がない。砂糖菓子で出来たトレイやスプーンはそれをそのまま食べつくしてしまう、という廃棄物を一切出さないというコンセプトをもつ環境に配慮したデザイン。それは「現実に使用可能なプロダクトのために技術を使わなければ意味がない」、というマライエの理念を反映させている。

コンパクトにまとめられた食空間のデザインは食をインテリアの一部と捉え、食べるという破壊行為を伴う建設的な運動を、人間の活動のサイクルの不確定さになぞらえているようにみえる。
2004年には今までの彼女の活動を具現化するものとして、Piet HekkerとともにレストランProefをロッテルダムにオープン。
プルーフの概念はレストランであると同時に食との関わりを研究する為のデザインスタジオというものである。2006年にはプルーフアムステルダムを市内郊外にオープンさせ、自身の創作活動の拠点を構えた。そこではウイークエンドのレストランとしての機能とともにフードデザインをレクチャーするという啓蒙機関としての顔ももつ。
アムステルダムでも昨今話題のエリア、ウェステルガスファブリークにオープンしたプルーフアムステルダムは土日限定ながらマライエのFOODの世界が堪能できるレストランとして早くも話題だ。マライエのオフィス兼アトリエでもあるプルーフアムステルダムはロッテルダムにあるプルーフとは異なる世界観が味わえるとあって業界はもとより、お洒落に敏感な若者やこの街を訪れるあらゆる世代の人々に支持されているようだ。

ウェステルガスファブリークはアムステルダム郊外に19世紀に建てられたガス製造工場があった地区。廃墟のようになっていたその場所が2003年、赤レンガの建物を残しつつ再開発された。ガス工場跡地の巨大な敷地を含む周辺地域はギャラリーやカフェレストラン、ミュージアムや映画館などに生まれ変わった。文化を発信する施設としての役割を担い、ショッピングモールもある話題のスポットとなっている。10年間掛けて開発されたというこの地域は、さしずめ日本では同じく古い赤レンガの建物の残る横浜にあるみなとみらい地区といったところだろうか。



http://www.proefrotterdam.nl/
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...food they dream...Marije Vogelzang...3-1
maraj

料理は人間の生活を豊かにするための最前列に位置するもっとも重要な要素である。私たちは人生のなかの重要な楽しみのいくつかを食に委ねているといって過言ではない。
もし食べ物が楽しみに彩られた美しいオブジェでなかったら?それはいくらか味気のない人生とはいえやしないだろうか。
2004年にロッテルダムにオープンしたProefはあらゆる意味で衝撃的なレストランである。そのコンセプトとなるアイデアは気鋭のフードデザイナーが手がけたレストランであるという以上に、私たちの食文化、そして食に対する概念を根底から覆してしまいかねない驚きにみちていたからだ。
マライエは危険を冒すことを恐れず新しい道を進んでいる、と同じオランダのデザイナー、ヘラ・ヨンゲリウスは彼女を評価する。
ヘラ・ヨンゲリウスの元で一年間デザイナーとして働いた経歴を持つマライエはProefプルーフというコンセプチュアルな食文化に対する新鮮なアプローチで、今や世界中が注目するフードデザイナーである。
1978年生まれというから今年29歳になるマライエ・フォーフェルサングは、2000年にオランダのデザインアカデミーアイントフォーフェンを卒業。アカデミーに在籍当時から新しいデザインに対するアプローチを模索していたという彼女は、人間にとって日常もっともみじかなもののひとつで、みじかであるがゆえにおざなりになりがちな食に対する正当なアプローチを試みる。
彼女の問いかけはこうだ。人は家具をデザインし洋服をデザインする。車をデザインし人が住まうための家をデザインする。そんなにも人のためのデザインをしているのになぜ食をデザインする人はいないのか?

食を完璧にコントロールすることは、言い換えれば人間の実存の領域に踏み込むことだ。それはデザインするという人の営みがいまだ到達していない、ある意味では不可侵な領域に踏み込むことでもある。
伝統と格式は時に文化をがんじがらめに縛るしがらみを生み、文化の健全な育成を阻むものになるときがある。食は西と東、時と場所を選ばず至るところに遍在する人間の根本概念のことである。

http://www.proefrotterdam.nl/
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...food they dream...Marije Vogelzang...


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