FORM_Story of design(... Kato Takashi weblog)

VORMGEVING* 2-2
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この本には現代オランダ建築を代表する建築家グループ、MVRDVのヴィニー・マースのインタビューも収録されている。そこで語られる彼らによるアルメーラ地区開発計画に話は壮大かつ、現代のオランダの国土計画が、ヨーロッパにおける最先端の都市モデルを示すものとしての問題意識が極めて高いものであることが分かる。アルメーラとはアムステルダムから電車で20分の場所に位置する、アムステルダムのベッドタウンとして近年OMAによる市街地再開発計画が行われた新しい街だ。この計画には日本からも招待建築家としてアトリエワン、そしてこの本にコラムを寄稿していただいた建築家の吉村靖孝氏も参加している。
そこにみるオランダ人の土地を切り拓き、「更新」していく気運は、DUTCH DESIGN本のなかでこの本のスーパーバイーザーの1人でもある建築家の藤村龍至氏が言及しているように、オランダという郊外=「場所なき場所」に時代を超えて受け継がれた、オランダ国民自らその場所を構築するモチベーションたりえているのだろう。

振り返ってみれば僕がこのブログを書きはじめたきっかけのひとつに、オランダのデザインを記述してみたい、という思いがあった。
10年ほど前、初めてみたドローグデザインにはこれまで僕がデザインの名の下に好きで見てきたものの、さまざまな要素がミックスされていた。
シンプルなものの機能的な良さや、芸術作品のような美しいと思えるフォルム、そのものに込められたストーリーや、モノがもつ社会的な役割など。
ひとつのモノのなかにそれが作られるまでの、ヒストリーや、リサーチのプロセスが見事なまでに可視化されている。
自身の活動を出版やプロセス開示によって、実現、不実現に関わらず自らフォローするダッチデザイナーたちのやり方は、ブログやトーク、ZINEといったローカルなメディアと、既存のポピュラーでグローバルな大手メディアを舞台にテキストや言葉を発表する、ライターや編集者像を目指す今の僕自身のあり方にも繋がっているような気がした。

この本のタイトルにある「VORMGEVING」とはオランダの古い言葉で、英語でいうところの「FORM GIVING」かたちを与える、という意味だ。現代におては広い意味でわれわれがよく見知った「デザイン」という言葉に置き換えることも可能だろう。
そんなオランダデザインと出会い、僕はデザインを書くことで、デザイナーと社会を繋げる存在になりたいと思うようになった気がする。
デザイナーとは、ある意味では、誰よりもすぐれた芸術家である必要があるけれど、芸術家とは違う方法で、もっと広く社会に役立つ存在であって欲しいといま僕は考えている。ひいてはそれが、書くことを仕事としている自分を社会に接続する方法になるのではないだろうか。そんなことまで考えている。
今回上梓された「DUTCH DESIGN」は僕にとってもこれまでの活動の集大成といってもいいものだ。それをこのブログを通じて出会い、そして時に活動をともにするようになった友人である木戸氏の仕事に関わることで実を結ぶことができた幸運に心から感謝したい。この本は僕に、書くこと、伝えることの原点を再び気づかせてくれたように思う。




「DUTCH DESIGN オランダデザイン 跳躍するコンセプチュアルな思考と手法」
 EDITORS AND AUTHOR 
 MASASHI KIDO
 パイ・インターナショナル
 お問い合わせ:ピエ・ブックス
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VORMGEVING* ダッチデザインの跳躍的思考 2-1
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1年近くかけて微力ながらお手伝いさせていただいてきたオランダデザイン本、「DUTCH DESIGN オランダデザイン 跳躍するコンセプチュアルな思考と手法」がついに発売になった。
オランダのデザインは、このブログを通じて5年以上かけて個人的にも考えてきたテーマだ。その間、ブログ開設当初から追いかけてきたかいもあって、友人たちの助けにより、ブログでもたびたび紹介してきたオランダのデザイナーたち、ヘラ・ヨンゲリウスやデマーカスファン、マーティン・バースや、クリスティン・メンデルツマ、ウィキ・ソマーズ、マルセル・ワンダースらに日本にいながらにして、出会い、インタビューさせていただく機会をえ、オランダデザインに関する記事を雑誌などに発表する機会もわずかながらも得ることができた。
僕とこのオランダ本のなかで紹介されているコンテンポラリーダッチデザインとの出会いは、10年以上も前にさかのぼる。それはかつてオランダに長年住んでいた友人との出会いがひとつのきっかけになっている。
その友人から、オランダの人々は誰もがデザイナーであるといってもいいくらい、自分たちの暮らしを美しく、豊かにしていくことに敏感だ、と聞いたことがある。その当時ちょうどドローグが日本でも注目を集め始めていた頃だ。彼が言うには、アムステルダムの人はドローグなんて高くてあまり買わない、彼らは中古の家具を安く買うなど、既存にあるものをうまくリユースしながら日常の暮らしを豊かに楽しんでいる。
かくいう彼も、オランダじこみのジャンクでカラフル、一見キッチュに見えるユニークな雑貨を、楽しげにコーディネートしながら、誰よりもオシャレなカフェを営んでいた。
そんな、誰もがそれを、デザインとは思わずに、僕らからみれば「デザイン」といえるようなことを当たり前に日常の暮らしの中で楽しんでいるオランダの人びと。
それはいいかえれば、デザイナーも日常の暮らしを楽しむすべにたけた、1人のオランダ人だともいうことができるのだろう。

この本に収録されたデザイナー、ワダケンジさんのエッセイにもあるが、オランダの国技はデザインといわれるくらい、その国民性には広く当たり前にデザインという概念が浸透している。そのことはこの本のための打合わせ中にワダさんから聞いた、オランダの人々の暮らしぶりにも垣間見ることができる風景だ。
そこには、誰もが互いに共有すべき、社会共有資本としてのデザインというスタイルがあるように、デザインという言葉にいまだに振り回されている日本人である僕にはみえた。

このDUTCH DESIGN本の中から印象的なテキストをいくつか例に考えてみよう。
デザイナーの原研哉氏が建築家の西沢立衛氏との対談のなかで、100個の電球を束ねたドローグのランプを引き合いにだし、シンプルな発想で極端なモノの良さが生まれるオランダデザインの側面を見事に言い当てているが、まさに僕もその通りだと思う。
また、オランダにはオランダの国はオランダ人がつくった、という言葉があるように、その国民性にはすべての面においてフロンティアスピリットが溢れていると言われている。つねに水を汲み上げ、干拓をして、自ら作り上げたその土地を守るため、大波に備えるために護岸を整備し続けなければならない。この国土維持のための「ポルダーモデル」といわれるこの国独自の建国のスタイルは、オランダの大地にあって、古代から綿々と受け継がれてきた国民性のようなものだろう。


「DUTCH DESIGN オランダデザイン 跳躍するコンセプチュアルな思考と手法」
 EDITORS AND AUTHOR 
 MASASHI KIDO
 パイ・インターナショナル
 お問い合わせ:ピエ・ブックス
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Studio Wieki Somers 'Chinese Stools'


東京は今、デザインでいっぱいです。
まずは、広尾のギャラリー ル・ベインのオランダのデザイナー6組による展覧会
「トレージャー・ハント:心を捉えるものは何?」より、Studio Wieki Somers 'Chinese Stools'。
中国の路上で実際に使われていたというカスタマイズした椅子を、ソマーズがアレンジ。
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...Sarah van Gameren...Big Dipper...


オートメーションはモダニズムが生み出した産業効率化の手段である。そこでは人のかたちや影は排除され、機械だけが馬鹿でかい音を出し、うなりを上げながら規格化された無個性な製品を作り出している。
「ビック・ディッパー」はそんなオートメーションのシステムの中から生み出されたひとつのあだばなだと思う。
Sarah van Gamerenサラ・ファン・ハメレンはオランダのデザイン・アカデミーで学んだのち渡英、ロイヤル・カルッジ・オブ・アートのデザイン・プロダクト科で学んだ。
ビック・ディッパーとは字義通りに言えば、北斗七星とか大きなものを液体に浸す、という意味だろうか。シャンデリアそのものをキャンドルに見立て、支柱もろとも液状の蝋に漬け、真っ白いシャンデリアの形をしたキャンドルを作りあげる。

キャンドルもシャンデリアもともに明かりを燈すものであると同時に、癒しの効果をもった神秘的なものである。
今年の夏にRCAの卒業制作として発表されたビッグ・ディッパーは、その後10月にロンドンのデザイン・ミュージアム開催のデザイナーズ・イン・レジデンスを巡回、その後シャンデリアのみが日本にやってきた。

ビック・ディッパーを作るための装置は時計技師とともに開発されたもので、機械仕掛けで24時間で正確に24個制作されるという。正しくは12時間で12個制作が可能だという。
その装置がまるで精密な機械式時計の内部構造を思わせる、機械が芸術家たちにさまざまなインスピレーションを与えた時代の、オブジェのような美しさをもっているのだ。
円形の大掛かりな装置には12個の鉄の生のシャンデリアが吊るされ、それが正確に液状の蝋の入ったドラム缶の上で上下し、蝋に浸される。すると鉄の骨子に蝋が年輪のように付着し擬古してゆき、12時間をかけて1つの製品が出来上がるというものだ。

「ビック・ディッパー」の優れたところは、製品制作のプロセスがひとつの立派なインスタレーションとして成立していることだ。
現に制作の過程を記録した美しい映像のムービーも制作されていて、先のデザインタイドの会場でもエンドレスで上映されていた。
サラ・ファン・ハメレンのプロダクトデザイン、もしくはコンセプチュアルな活動は火を点す、ということに着目した物や事柄が多い。このビッグ・ディッパーにしても、RCAプラットフォームで発表した、家具に可燃性のペンキで装飾を施し点火、あえて残った燃えカスをも装飾に見立てたパフォーマンス「Burn,Burn,Burn」にしても、マッチをドミノ倒しの要領で並べたパフォーマンス「Chain Reaction」にしても、火を点すことに何かしらの意味を与えているように思えるのだ。
それをありきたりな女性的な激しいエモーションに結び付けて考えてたとしても、あながち間違えではないと思うのだが。

big2
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...floor van ast...dutch daze...
floor van ast


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...Dick van hoff...Salone del mobile...2-2.
dick

ディック・ファン・ホフはオランダの名門デザイン・アカデミー、アイントフォーフェンで教鞭も執る。その独自のデザイン理論には信奉者は多いと聞く。アイントフォーフェンの卒業生、21世紀と17世紀を繫ぐ時代の扉を開くポエジーにあふれたシンデレラテーブルで話題のデザインユニット、デマーカスファンのイエルーンもその一人だ。
ディック・ファン・ホフのデザインするものは、装飾的ではなく機能に忠実に見え、時に機能がそのまま形になったようなプロダクトが存在する。

今までにもヘラ・ヨンゲリウスやマルセル・ワンダース、昨年にはスタジオ・ジョブをフューチャーした展示を見せたロイヤル・ティヒラー・マッカム。今年コラボレートしたディック・ファン・ホフの「WORK」は、磁器とそれと異なる素材である木=オークをマテリアルに使い、一見ちぐはぐな中にも自然素材を使用することによってプロダクトに全く新鮮な驚きを与えることに成功している。それが老舗陶磁器メーカーであるマッカム社が作るということに少なからず意義があるように思える。

1920年代のベークライト製のデスクランプを思わせる2つの磁器製のランプは、オークの支柱の素材の肌理が美しく際立ちモダンな印象と、磁器製の台座とランプヘッドの素材感は現代的なあでやかさをもっている。フラワーベースは磁器の光沢あるテクスチャーとオークの質感が見事にマッチし、フラワーベースそのものが静かな存在感を放っている。そこにはまさに素材そのものの用途とその組成を生かした機能的な美があり、それはファインアートのようなデザインとは一線を画した美しさだ。
またそれらが展示されるプライベートなワークスペースを思わせる空間構成も見事。磁器のしっとりとした存在感はこんなにも空間そのものを変えてしまうのかと驚かされる美しさが見受けられるのだ。
秋には100%デザインでの出展も決まっているオランダのロイヤル・ティヒラー・マッカム社。ディック・ファン・ホフの「WORK」がその目玉になることは間違いがないだろう。
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...Dick van hoff...Salone del mobile...2-1.
HOFF

今年もミラノ・サローネが開催されている。
イタリアのタイルメーカー、ピザッツアからはハイメ・アヨンの巨大なオブジェやジョブのスケール感の消失したオブジェが展示され話題を呼んでいる。エスタブリッシュド&サンズからは昨年賛否の論争を巻き起こしたモリソンのクレートにファミリーが、ドリアデは深澤直人やスタルクの新作、ヴィトラからはヘラ・ヨンゲリウスの新作ワーカーチェアの美しいバランスの2シーターが発表されている。ドローグからは昨今話題のヨーリス・ラーマンのボーン・チェアが展示されたり、アイントフォーフェンを卒業したばかりの若手の作品も並んでいるようだ。

オランダの老舗陶磁器メーカー、ロイヤル・ティヒラー・マッカムが今回発表したのは、初期ドローグでも活躍しているオランダの理論派デザイナー、ディック・ファン・ホフの磁器とオーク材をモチーフにしたシリーズである。花瓶、置時計、コンテナー、2つのデスクランプからなるシリーズは「WORK」というコンセプトの名の下に収集されたコレクションだ。

ディック・ファン・ホフは1971年生まれのデザイナー。1997年にドローグから発表した磁器のシェードを持つポーセリンランプが話題になった。ポーセリンランプはアムステルダムのロイドホテルの内装にも使われている。ロイドホテルは1921年に建てられたレンガ造の建物をリノベーション、ヘラ・ヨンゲリウスやヨルゲン・ベイ、クラウディ・ヨングストラら自国のデザイナーや、ジャスパー・モリソンやマルティ・ギセらのインテリアを起用していることでも知られる。全体のインテリアデザインは気鋭の建築集団MVRDV。リノベーションは市が中心となって行われ、気軽に立ち寄れるというレストランもあるというからアムステルダムを訪れる際は必ずや立ち寄ってみたい場所のひとつだ。

*写真は今年のティヒラー・マッカムとディック・ファン・ホフのポスターの一部です。

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2
finger

デザイン・アカデミー・アイントフォーフェン。
全ての学部の名称の頭にはMan~が付けられ、デザイン教育ばかりではなく、アカデミーの果たすべく人間教育の役割を全面に打ち出している。
学生は8つの自主的な目的に適った専門学科に進む前に、コンパスと名付けられた予備課程で、テクノロジー、文化、クラフト、経済、といった異なる課題をレクチャーされ、そこでの経験を元に進むべき専門学科を選択する。
21世紀に入って修士課程としてman and humanityが新設された。
9.11以降の人間のテクノロジーとの関わりを問う、根源的な意味合いに触れる問題に直面するための試算。

人と物との関わりの中からヒューマニティという感性を構築し、物に人と人が置かれた環境とを結びつけるインターフェイスとしての役割を付与する為の、人間教育の重要性を訴えている。
それは21世紀デザインには、環境と人間との関わりに基づくヒューマニズムの繊細な感性が求められている事を示唆する、重要な概念であると私は理解している。


http://www.trendunion.com/
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...Li Edelkoort...design in my mind....1
Li

世界のデザインおよびアート・シーンに今なお刺激的な旋風を巻き起こしている、オランダにあるデザインアカデミー、アイントフォーフェン。フロックスを運営するクリスティン・メンデルツマ、シンデレラ・テーブルとレース・フェンスのデマーカスファン、スモークという作品ひとつでアートとプロダクト・デザインの垣根を破壊した、マーティン・バースらを近年輩出。ますます目が離せないデザインのトレンドを生み出しているといっても過言ではないアカデミーである。
21世紀に入ってメガ・トレンドを予測・調査するトレンド情報機関の一つであるパリの『トレンド・ユニオンン』を主宰するリー・エーデルコートがチェア・ウーマンに就任。エーデルコートは1950年オランダ生まれ1975年にパリに渡り、以来トレンド・スペシャリストとして第一線に携わる世界のファッション・シーンの最重要人物の一人である。アイントフォーフェン・デザイン・アカデミーに於いて彼女の存在は教育の方向性を現代のトレンドや社会情勢との密接な関わりの中で指南する重要な役割を担っているという。

http://www.edelkoort.com/
http://www.trendunion.com/

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...Studio Job, Triumphal Arch.....
Triumphal Arch

ナイメーヘンの小学校の校庭の脇に設営されたステュディオ・ジョブの凱旋門。
凱旋門の壁面には精緻に描かれたジョブ作品に固有の動物やグロテスクな昆虫、魚や奇怪な人々たちの絵が配置され、ジャングルジムで遊ぶように子供達が跳ね回る。
The baby Arc de Triomphe=ベイビィ凱旋門と名づけられたジョブの作品は、彼らのコミック主義とも言える(例えれば彼らが心酔しているコミック「SUSKE en WISKE」への憧憬と思慕)幼い時からの体験と嗜好によって裏打ちされた、作家の趣味性の深さから生まれたジョブにとって夢の具現化の賜物である。
ジョブの作品を見れば分かるのだが、明らかに恣意的に崩された物のスケール感は、ものの’在り方’を問う、哲学的な意味合いに於いて存在論の問題を孕んでいる。
どの様な作品であろうとジョブの作品には、自らの経験のしっかりとした咀嚼の能力と、表現に於けるクラフトの力学への希望を忘れない。
だからこそジョブの作品には中世から続く職人の誇りが漲っているのだ。

http://www.designws.com/pagina/1arch.htm
http://metabolism.jugem.jp/?day=20061110
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