ジャーナリストの石川仁志氏がキュレーターを務める、写真家細江英公氏の小品展覧会。
下着デザイナー鴨居羊子氏が制作した手製人形を題材に、若き細江英公が青森、晴海などを舞台にモノクロームで撮影した1966年の作品。
演出家唐十郎の世界観に通じる劇的空間を演出する細江英公の写真は、モノクロームの写真表現もあいまって、表情の変化のない人形をあつかっていながら、幻想的でときにコミカル、そしてエロティックな世界をうつしだしている。
夢でありうつつ、そしてまぼろし。カメラは物質ととまった時をうつしだす、夢の装置だ。
細江英公氏が人形写真を撮影するようになった背景にはこんな逸話がある。ある日、鴨居羊子が細江氏のもとをおとずれ、バッグ一杯の手製人形を差し出したという。どうぞお好きなように。
そこには芸術家同士の強いシンパシーがあったのだろう。
今回の展覧会にも出品されているのだが、細江英公が撮影した鴨居のポートレート写真には、1950年代にすでに髪を金色に染めたエキセントリックな女性の、コケティッシュで神秘的な一面が映し出されている。
なお同展覧会には、細江英公氏の写真作品集や貴重な資料等も展示販売されていて、それを手に取り見るだけでも細江ファン、そして写真愛好家には大いに刺激になるに違いない。
細江英公写真展<ミス・ペテン>
森岡書店
2008.6.2(月)- 6.28(土)
13:00-20:00
日曜定休日